2017 Fiscal Year Annual Research Report
Survival strategy of the parmophytes as a model of photosynthetic picoeukaryotes living in the cold water regions
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17J01950
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Research Institution | Prefectural University of Kumamoto |
Principal Investigator |
YAMADA Kazumasa 熊本県立大学, 環境共生学部, 特別研究員(PD) (20778401)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 親潮 / 現場個体群の培養 / 高緯度海域 / 死滅速度 / 生理状態 / 増殖速度 / パルマ藻 / ピコ藻類 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年の環境DNA解析により,基礎生産力の高い高緯度海域に,細胞直径5 μm未満のピコ藻類が当初考えられていたよりも多く存在することが明らかになってきた.しかし,増殖や休眠,死滅といった生理状態に関する理解は進んでおらず,高緯度海域特有の季節的な環境変化の下でピコ藻類が個体群を維持する機構には不明な点が多い.本研究では,高緯度海域の代表的なピコ藻類であるパルマ藻をモデルとして,電子顕微鏡の活用により細胞壁の特徴からパルマ藻の種を識別しながら,現存量,増殖速度,細胞内構造を評価し,その経年的な変化を明らかにすることを試みている. 平成29年度は2017年5月,7月,10月,2018年1月の計4回,親潮域のモニタリングサイトA-lineにおける調査を実施し,増殖・死滅速度を評価するために,船上水槽にて現場個体群の培養実験を行った. 2017年5月には,既報3属23タイプのパルマ藻の内,2属9タイプが検出された.パルマ藻全体の細胞密度は全層(0-150 m)で10000 cell/l以上あり,水深20-40 mでは100000 cell/lを超えた.水深0-30 mではTriparma strigataが,水深50 m以深ではTriparma laevis f. inornataが全体の半数以上を占める優占種となり,鉛直的な優占種の違いが見出された.パルマ藻群集の平均比増殖速度μは,光強度が表層の1-10%程度となる水深40 m付近までの有光層内では0.1-0.3/dayと,増殖期にあることが示されたが,光強度が表層の0.1%程度となる水深50 m以深では全ての種で細胞密度の減少が進行していることが示された.したがって水深50 m以深の薄光層に存在したパルマ藻個体群は,優占したT. laevis f. inornataを含め,有光層で増殖し沈降してきた個体群であると推察された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では高緯度海域におけるピコ藻類の個体群維持特性を理解するため,寒冷海域の代表的なピコ藻類であるパルマ藻をモデルとして,現場群集の経年的な個体群密度,生理状態変化を明らかにし,その現場群集の動態を室内実験に基づいて生理学的に理解することを目指している. 今年度は,当初の予定通り年4回の調査を実施し,全ての調査で現場個体群の船上培養実験を遂行した.その結果,一部のサンプルの解析結果ではあるものの,光強度が表層の0.1%以下となる薄光層の個体群が,有光層で増殖した個体群が下層へ沈降したものである可能性を見出すなど,増殖活性を評価することで初めて明らかになる知見が得られている.また,これまで培養株の無かったTetraparma属の単離培養に成功し,次年度の室内生理解析に向けた準備も進行した.平成29年度中に解析を進める予定であった現場細胞の透過型電子顕微鏡解析は,当初計画していた遠心分離法では解析に十分な量の細胞ペレット形成が困難で解析が停滞していたが,細胞凝集剤の使用により細胞ペレット形成が可能であることを確認した.これらの理由から,研究の進捗はおおむね順調であると評価した.
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度に,環境の異なる4シーズンのサンプルが全て取得されたことから,平成30年度は前年度に取得した現場サンプルの室内解析を中心に進め,季節間でのパルマ藻群集の種組成,鉛直分布,増殖活性の違いを明らかにしていく.また現場細胞の透過型電子顕微鏡解析を,新たに導入した細胞凝集剤を用いた細胞ペレット形成法を活用して進めていく.さらに,これまでのデータ解析からTriparma属とTetraparma属の最適増殖環境に違いがある可能性が示されていることから,平成29年度に確立したTetraparma属の培養株を用いた増殖生理特性解析を進め,既に解析が進んでいるTriparma属の生理特性との比較を試みる.
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[Presentation] Biology of a picoeukaryotic phytoplankton, Parmales(Bolidophyceae), a sister group of diatoms2017
Author(s)
Akira Kuwata, Mutsuo Ichinomiya, Shinya Yoshikawa, Kazumasa Yamada, Masanobu Kawachi, Mary-Helene Noël Kawachi, Kenji Saitoh, Yoji Nakamura, Ken Sawada, Adriana Lopes dos Santos, Daniel Vaulot
Organizer
International Conference Molecular Life of Diatoms
Int'l Joint Research
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