2017 Fiscal Year Annual Research Report
Sensitive analysis of interfacial species at liquid|liquid interfaces by polarization-moduation total internal fluorescence spectroscopy
Project/Area Number |
17J02009
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
山本 翔 金沢大学, 自然科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 液液界面 / 分光電気化学 / ポルフィリン / 吸着配向 / 会合 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,液液界面に吸着配向した化学種を高選択的に測定できる偏光変調全内部反射蛍光(PM-TIRF)分光法を用いて,アニオン性ポルフィリンの会合挙動の電位依存性を解明した。これと並行して,金属錯体の界面反応機構の解明にも取り組んでおり,金属錯体の吸着挙動と錯体の構造の関係について得られた結果を学会で報告した。 ポルフィリンの電位依存会合挙動の研究では,液液界面に吸着することが知られているTPPSに対するPM-TIRF測定から,プロトン付加体が電位窓内全域で吸着配向することが示唆された。また,液液界面に吸着したTPPSのプロトン付加体は,界面でJ会合体を形成し,単量体の有機相への移動に伴って解離することが明らかになった。さらに,この会合体形成は,界面電位差で正確に制御可能であることが実証された。得られた結果は,第77回分析化学討論会で報告し,Langmuir誌で発表した。 8-キノリノールの金属錯体の研究では,スルホ基を有するQSとカルボキシ基を有するQC二つの金属錯体の吸着挙動を研究し,水分子の軸配位が金属錯体の界面吸着性に影響を与えることを明らかにした。亜鉛のQS錯体系で,水|DCE界面においてPM-TIRF測定により界面化学種の蛍光スペクトルを測定したところ,1:2錯体が水分子が軸配位した状態で界面に吸着配向することが示唆された。一方,中心金属に対する水分子の軸配位が生じないQC錯体では,界面領域の極性と電位に依存して吸着状態が変化することが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
液液界面に吸着配向した化学種を高選択的に測定できる偏光変調全内部反射蛍光(PM-TIRF)分光法を用いて,アニオン性ポルフィリンの会合挙動の電位依存性を解明した。これらの結果は,複数の電荷移動反応が同時に生じる場合や複数の吸着化学種が共存する条件においても,PM-TIRF分光法を用いることで,吸着化学種を選択的に測定でき,液液界面における反応機構を分子レベルで解明できることを実証している。 本年度はこれと並行して,金属錯体の界面反応機構の解明にも取り組んでおり,金属錯体の吸着挙動と錯体の構造の関係について得られた結果を学会で報告することができ,おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,円偏光を利用した新規測定法を開発し,液液界面におけるキラリティー測定への応用を進めていく予定である。試料として,ポルフィリン環のmeso位にアニオン性のスルホナトフェニル基を持つポルフィリン(TPPS)を使用する。TPPSは,pH 2の水|DCE界面で,界面に吸着したプロトン付加体のTPPSがJ会合体を形成し,電位で制御できることが明らかになっている。特に,この条件下におけるTPPSの会合体形成は界面でのみ生じるため,会合体形成のキラリティー発現のメカニズムを研究するのに役立つと期待できる。溶液中や液液界面で,TPPSはキラル分子存在下でらせん型の会合体を形成することが報告されており,これらは円二色性を示す。 本研究では,キラル認識分子としてL-またはD-酒石酸を共存させ,キラルな会合体を界面に形成する。水|DCE界面に形成したTPPSのJ会合体に,全内部反射条件で励起光を界面に入射し,TPPSの会合体を直接励起する。このとき,励起光の偏光を液晶移相子で左円偏光から右円偏光に周期的に変調し,得られる蛍光強度の差をロッキンアンプで検出する。 液液界面におけるキラリティー測定では,直線偏光の影響をいかに取り除くことが重要になる。そこで,本実験では,以下のような装置の最適化と実験方法の改善を進める。1)アキラルな分子で吸着配向するが,会合体形成しない条件下(pH 7の水|DCE界面におけるTPPSなど)で円二色性測定し,直線偏光の影響がなくなるように実験装置の最適化を行う。2)使用していたLCRの変調周波数および変調効率がが低かったため,温度制御付きのLCRを導入し,変調効率とシグナルノイズの改善を図る。キラリティー測定が成功すれば,会合体のキラリティー発現の機構を明らかにする。
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Research Products
(6 results)