2017 Fiscal Year Annual Research Report
アイデンティティと経済行動:経済実験および実証分析
Project/Area Number |
17J02016
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
黒川 博文 同志社大学, 政策学部, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | アイデンティティ / 競争 / 経済実験 / 長時間労働 / ピア効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では社会的アイデンティティが競争意欲に与える影響を経済実験で検証した。男性よりも女性は能力が発揮できなかったり、競争を避けることが知られているが、女性は女性同士での競争環境では能力を発揮できることも知られている。この研究では、競争相手が同じ集団に属するかそれとも異なる集団に属するかで、パフォーマンスに違いがあるか、また、競争態度が異なるかを明らかにすることが目的である。実験の結果、自分とは異なる集団に属する相手が競争相手のとき、男性はより能力を発揮し、進んで競争を好むことが明らかとなった。一方、女性は、競争相手が異なる集団に属するときの方が能力を発揮するが、競争相手に関係なく、競争は好まないことが明らかとなった。 また、A社の協力のもと社内で独自調査を行い、残業時間に関する人事データと組み合わせて長時間労働をしやすい人の特性を明らかにする研究を行った。分析の結果、他人を気にする人や、夏休みの宿題を後回しにしていた人ほど、深夜残業が長いことがわかった。また、A社内で導入された月の残業時間45時間を目標とする制度変更の政策評価を行った。残業上限目標は有意に残業時間削減効果があり、特に、制度導入以前に45時間以上残業していた人の残業時間削減効果が大きいことが明らかとなった。さらに、同じA社のデータを用いて労働時間のピア効果を推定を行った。長く働きがちな同僚が同じチームに入ってくると、残業時間が長くなることが確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
初年度のうちに経済実験を実施し、分析まで進めることができた。また、長時間労働に関する研究を『行動経済学』に掲載することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
社会的アイデンティティに関する経済実験および長時間労働に関するピア効果に関する研究を国内外の学会で報告をし、コメントに基づき、論文の改訂や追加実験を行う。
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