2017 Fiscal Year Annual Research Report
質量選択画像観測法による高層大気成分分子クラスターの光吸収-解離反応機構の解明
Project/Area Number |
17J02032
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
奥津 賢一 東北大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | イオン画像観測 / 質量分析 / 光解離反応 / クラスター / 化学反応動力学 / 飛行時間質量分析計 |
Outline of Annual Research Achievements |
高層大気成分(e.g. 二酸化炭素, 一酸化窒素)などはこれまで孤立分子や気相について様々な実験や量子化学計算が行われてきた。高層において低温となる領域で孤立した分子だけでなく、凝集してクラスターとして存在していることが考えられ、高層大気成分の分子クラスターについて研究することは非常に重要である。本研究では運動エネルギー放出(KER)に伴う分子回転の影響についてイオン画像観測法を適用することで明らかにし、これらを踏まえて高層大気成分の分子クラスターを対象に光吸収-解離を行い、解離生成物について画像観測しその解離機構を解明することを目的とする。 これまでに、二酸化炭素二量体正イオンについて可視光解離を行い、解離イオンである二酸化炭素正イオンについて画像観測を行い、解析により2種類のKERを持つことを確認した。これは同じ電子状態のイオンが光吸収に伴う励起後に異なる経路を辿って解離したことを示唆している。また観測画像ではKER以外にも電子励起と解離軸のなす角と解離の起こる時間に依存する異方性パラメータを測定し、先ほどの2種類のKERでそれぞれ異なる異方性パラメータを得た。特にKERが小さい場合においては異方性パラメータも小さい値を取っていたことから、KERが大きい場合と比べ励起後により時間をかけながら解離反応が進行したと考えられる。以上の実験結果について量子化学計算を用いて解離経路について検証を行うために基底状態、励起状態のポテンシャルエネルギー曲面(PES)の計算を行った。計算の結果、励起後に大きなKERを与える速い解離性のPESと解離に時間を要することが考えられる井戸型の曲面を新たに発見し、実験結果を支持する計算結果が得られた。以上のことから二酸化炭素二量体正イオンの可視光解離において励起後のPESにより異なる解離経路を辿って解離イオンが生成していることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度では、それ以前に開発を完了した質量選択気相イオンからの質量選別光解離イオンの画像観測装置を、高層大気中のクラスター粒子の太陽光による反応系に適用することを試みた。その結果、二酸化炭素や一酸化窒素のクラスターイオン系、酸素分子と水分子からなる分子錯体イオン系などについて、紫外から可視領域にいたる幅広い波長領域で解離画像を観測して解析し、その解離反応機構についてより定量的で新奇な知見を得ることに成功した。さらに、電子励起状態を含む解離反応のポテンシャルエネルギー曲面の量子化学計算についても精力的に実施し、実験結果と相補的な成果を得るに至っている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、より高い分解能で画像が取得できるように新しいカメラを導入し、一酸化窒素のクラスター正イオンについて画像観測実験や量子化学計算を行っている。また、上記の系に加えて、Melbourne大学のグループとの合同討論を秋のシンポジウムの際に行った結果、彼らの対象としている窒素原子のクラスターイオン系の光解離反応機構を共同研究テーマとすることになった。この研究実施も含めて、装置のイオン源や検出器についてもこまめな改良を行うことができ、次年度のさらなる研究展開につなげることができていると評価している。
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Research Products
(13 results)