2017 Fiscal Year Annual Research Report
クロマチン制御による始原生殖細胞の転写抑制メカニズムとその生物学的意義の解明
Project/Area Number |
17J02073
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
巳波 孝至 神戸大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | C. elegans / 始原生殖細胞 / クロマチン |
Outline of Annual Research Achievements |
始原生殖細胞は大規模な転写抑制制御を行うことで未分化状態を維持する。本研究では、線虫始原生殖細胞における転写抑制制御に必須のクロモドメイン蛋白質MRG-1に着目し解析を進めることで、始原生殖細胞での転写抑制制御に関わるクロマチン制御の分子メカニズム及び、その生物学的意義の解明を目指す。 私たちは過去に、mrg-1変異体の始原生殖細胞において、いくつかの生殖細胞遺伝子が早期発現することを明らかとした。同様の表現型が他の遺伝子の変異体においても生じるのかを検証するため、組織特異的プロモーターを利用したレポーター解析を行った。結果、ヒストンH3K36メチル化酵素MES-4の欠失変異体においても、生殖細胞遺伝子の早期発現が観察された。MRG-1はその構造からH3K36メチル化修飾の認識に機能すると推測される。よって、MRG-1による転写抑制制御がMES-4によるヒストン修飾を介して行われていると考えられる。 次に、始原生殖細胞におけるMRG-1、MES-4による転写抑制制御とゲノムDNAの安定化との関係について検証した。線虫の始原生殖細胞では胚発生が完了し摂食行動を開始するまでの期間、凝集した6つの染色体構造及び、組換え酵素RAD-51のfociが核一つあたり1~3個観察される。しかしながら、mrg-1変異体では染色体構造が核内に一様に分散し、RAD-51のfociはほとんど観察されない。また、興味深いことにmes-4変異体では、野生型様の表現型が観察された。これらの結果は、MRG-1が転写抑制制御とは異なる機構で、染色体構造の維持にも関与することを示している。 以上より、平成29年度の解析では、線虫始原生殖細胞においてMES-4、MRG-1によるクロマチン制御を介した転写抑制制御が行われること、MRG-1が転写抑制制御とは別に、ゲノムDNAの安定化にも寄与することを明らかとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究は予定通り順調に進んでおり、現在、得られた知見について論文の投稿準備を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度はMRG-1との相互作用を介して転写抑制制御に直接的に機能する因子の探索を行う。平成29年度に作製した、タグ付きMRG-1を始原生殖細胞特異的に発現するトランスジェニック線虫を利用した免疫沈降実験を進めることで、始原生殖細胞内でMRG-1と相互作用する因子を同定する。 さらに、始原生殖細胞内における転写抑制制御とDNA修復機構との相関関係を検証するためにDNA修復関連因子の阻害、もしくは変異体を用いた解析を行う。
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Research Products
(4 results)