2017 Fiscal Year Annual Research Report
Urban Change in the age of Creativity in Germany
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17J02079
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
池田 真利子 東京学芸大学, 教育学部, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 創造性 / ベルリン / ジェントリフィケーション / 都市政策 / 文化政策 / 音楽 / ナイトライフ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はドイツ連邦主要都市内のインナーシティ地区変容のメカニズムを,特に文化創造的空間の役割から明らかにすることであるが,2017年度(初年度)には2度にわたる海外渡航(2017年9月・2018年2月)の結果,いくつかの重要な研究成果が得られた. まず,ベルリン市のインナーシティ2地区(ノイケルン地区・ウェディング地区)においてインタビュー調査と統計・資料類入手を含む現地フィールド調査を行った.ノイケルン地区は2010年以降の人口動態的変化が極めて顕著であることから定点的観測を行う必要があると判断し,2010年から継続的調査を行ってきた.本年度はその研究成果の一部を大手査読付き論文誌へ投稿し、掲載許可を得た.なお,ウェディング地区に関する調査結果は,次年度以降に発表予定である.また,当該調査期間には,既往調査の補足点を補う形で,シュプレー河岸域の文化創造的利用に関して主要アクターへのインタビュー調査に基づき,それらが可能となった背景や問題点を主要英文誌において論文化(印刷中)した.同論文では,当該河川周辺がナイトライフ地区として自明視される要因となったテンポラリーユースの集積とその歴史的背景,およびそれらがベルリン市行政の文化・経済・都市政策に取り込まれていく過程を明らかにした.なお両論文では,ベルリンの夜間経済の一部であるナイトライフ地区の変化にも副次的に注目した. したがって,本研究に関連するものとして,都市の夜間経済(Night-time economy)と夜間観光(Nightlife Tourism)に関する研究を開始した.特に,2020年の東京五輪における都市再編における夜間観光振興の可能性に関する単独発表のほか,若手研究者間の共同研究を開始するなど,意欲的に取り組んだ.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の研究進捗状況は概ね良好であると判断した.本研究には,著者がこれまでに行った単独調査の過程で得られたデータ・学術的知見が反映されている.特に本研究目的の1つである東西ドイツ都市比較研究においては,ベルリン市での長期研究滞在における実証的研究の経験・成果が役に立っている.しかし,過去の調査時期から3年ほど経過していたため,その間の変化を現地調査にて補完した.そのため,フィールドワークでは,聞取り調査のほか,建物利用調査等も行った.その結果,平成30年度には過去の調査の成果として,研究発表を含む複数の学術誌への発表が可能となった.また,過去の調査で得られた知見を基に,世界で活躍する若手研究者と,東京を含む複数の都市間の比較研究の可能性も得られており,これらの研究は応用的研究として今後さらなる発展可能性を含む.同研究に関しては,既存海外研究の展望を含む研究の基礎的段階を平成29年度に完了することができたと考える.また,シンポジウム企画を含むアウトリーチ活動に関しても積極的に参画しており,平成30年度中に,関連学術書籍が刊行予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
初年度と同様に,平成30年度も着実な研究の進展に尽力する.具体的には,夏季前までに,初年度の海外フィールド調査で得られた各種データの内容を整理し,夏季にこれらに関する理論的検討とデータ分析を行い,秋季にはそれらの成果を学術論文として投稿する.また,現時点で複数の地理学学術大会での発表が予定されているが,それに加えて地理学以外の関連学術領域での学術発表に挑戦する予定である.なお,現時点での計画として,これまでの調査の延長である地域調査・地誌的調査に加えて,そういった地域変容が与える個々の「場所」への影響を検討する予定である.すなわち,初年度は定量的測量による地域変化を論文化したが,平成30年度には,定性的測量に基づく場所の質的な変化にも目を向ける予定である.その際,東ドイツの場所と集合的記憶を足掛かりとして検討を行う。 他方で,初年度に一部開始したナイトライフの研究に関して,実証的研究を含むデータ・事例収集を行っていく予定である。なお平成30年度夏季には,国際地理学会IGU(8月,カナダ・ケベックシティ)を含む複数の国際学術大会での発表が予定されており,そうした場所で研究発表を行い,議論を深めていく予定である.
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