2017 Fiscal Year Annual Research Report
協奏機能触媒による環境調和型エステル合成反応の開発
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17J02101
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
中武 大貴 九州大学, 大学院薬学府, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 脱水縮合 / 化学選択性 / 触媒 / 環化付加 / 硫黄 / 複素環 |
Outline of Annual Research Achievements |
[1]カルボン酸とアミノアルコールのヒドロキシ基選択的な触媒的脱水縮合反応 本反応は、理想的な環境調和型縮合反応であるにも関わらず、カルボン酸の触媒的活性化機構に加えて化学選択性の逆転機構を必要とするため困難で、いまだ報告例が無い。一方で、ボロン酸触媒がカルボン酸を触媒的に活性化する例はこれまでに報告されている。また、当研究グループは、亜鉛等の高い酸素親和性を示す特定の金属塩が、アミノアルコールの化学選択性を逆転させ、ヒドロキシ基選択的な修飾を可能とすることを報告している。本研究は、金属触媒とボロン酸触媒のそれぞれが有する機能を協奏的に発現させ、カルボン酸とアミノアルコールの脱水縮合反応をヒドロキシ基選択的に進行させることで、原子効率とステップ数の問題を解決した環境調和型脱水縮合反応を開発することを目的とした。 申請書における実施計画に従い、酸素親和性金属触媒およびボロン酸触媒を用いた反応条件検討を行った結果、鉄触媒がアミン存在下でカルボン酸とアルコールの脱水縮合反応を加速させるという特異な性質を有することを見出した。しかしながら、本反応は高温条件が必要であり、副反応としてアミンとカルボン酸の脱水縮合が併発してしまう。そのため今後は反応条件の低温化を目的とした検討を進める予定である。
[2]チオノエステルを用いた環化付加反応 本反応は当初の研究予定には無かったものではあるが、安価で入手容易な原料から、医薬化学分野における重要骨格である含硫黄複素環骨格を環境調和的に合成可能とする手法である。私は新たに本研究プロジェクトの立ち上げに成功し、現在までに含硫黄5員環化合物合成法を開発し、論文発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず私は、研究計画に従い、これまで全く報告例のなかったアミン存在下におけるカルボン酸とアルコールの選択的脱水縮合反応の開発研究を行なった。本反応の達成には、アルコールとカルボン酸の同時かつ選択的な活性化が必須であり、アルコールの選択的活性化を担う酸素親和性金属触媒と、カルボン酸の活性化を担うアリールボロン酸触媒を同時に機能させる協奏機能触媒系によって本反応の達成を狙った。その結果、鉄触媒がアミン存在下でカルボン酸とアルコールの脱水縮合を加速させるという特異な性質を見出した。今後、二つの触媒を効率的に機能させるためのさらなる触媒構造最適化が必要である。 一方で、私は上記の研究とは別に、低級エステルの新たな利用法として「チオノエステルを用いた環化付加反応」という新規プロジェクトの立ち上げに成功し、これまで合成が困難とされていた含硫黄複素環化合物の効率的合成法を見出した。現在までに論文発表も行なっている。これらの研究は、当初の研究計画にはなかったものであるが、環境調和型の触媒反応であり、研究全体としては、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
アミン存在下におけるカルボン酸とアルコールの選択的脱水縮合反応については、現在までに鉄触媒がアミン存在下でカルボン酸とアルコールの脱水縮合を加速させるという特異な性質を見出している。しかしながら、現時点では高温条件が必要であり、カルボン酸とアミンの脱水縮合反応が併発する。今後は、アリールボロン酸などのカルボン酸活性化触媒を利用し、反応温度をより低温化することによってアルコール選択的な脱水縮合反応の開発の達成を狙う。 一方で、新たに見出した研究プロジェクトであるチオノエステルを用いた環化付加反応については、現在までに安価で入手容易な原料から短工程で含硫黄5員環化合物を効率的に合成する手法の開発に成功している。今後は、本手法を含硫黄6員環化合物へと適用することで、より多様な含硫黄複素環化合物を効率的に合成可能とする予定である。
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Research Products
(6 results)