2017 Fiscal Year Annual Research Report
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17J02113
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岸下 大樹 東京大学, 経済学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 政治の経済学 / ゲーム理論 / シグナリング / ポピュリズム / ナイト流不確実性 / 貿易政策 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、研究課題に関し理論的分析を行った。 (1)政治変動の要因に関する分析については、ポピュリズムと保護貿易政策の出現要因に関して研究を進展させた。ポピュリズムの発生原因としては不確実性に注目し、(1-a)エリートの政策選好が有権者のそれとどれくらい乖離しているかに関して、(リスクではなく)確率分布すらわからないナイト流不確実性が増大すると、ポピュリズムが発生しやすくなることを示した。保護貿易政策の出現要因の研究としては、(1-b)貿易政策に関する期待の形成が貿易自由化の政治的達成可能性に影響を与えること、その度合いは労働人口の高齢化の程度に左右されることを示したほか、(1-c)セクター間の労働流動性と貿易自由化の政治的達成可能性の関係性を分析し、労働流動性が高まるほど常に自由化が達成されやすくなるとは限らないという非単調な関係性が得られることを示した。 (2)政治の応答性を高めるために不可欠な少数党やマスメディアによる政治の監視機能の分析については、まず(2-a)少数党による議事妨害を可能にする議会におけるsupermajority ruleの情報的役割を明らかにするとともに、少数党とマスメディアによる監視機能の補完性を示した研究を行った。加えて、別の研究で(2-b)挑戦者による選挙キャンペーンが現職候補者の資質に関する情報伝達機能を持つためには、選挙キャンペーンが述べる情報にナイーヴに説得されてしまう限定合理的な有権者の存在が必要であることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
既述の研究内容についてはワーキングペーパとして公表済みである。本年度は国内外でこれらに関して研究発表を行い、論文を改善するために必要なコメントを得て、論文の改訂を行った。すでにそれらを踏まえて成果は出ており、研究(1-b)がEconomics & Politics誌に採択されたほか、そのほかの研究も査読雑誌に投稿中の段階にある。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き研究発表を重ねて研究の改善を図りながら、投稿中の論文に関して採択に至るよう努める。また、現在進行中の研究に関しても、ワーキングペーパーとして公表できる段階に至れるように努めるとともに、実験の実施についても検討を行う。これらを通じて、政治はなぜ失敗するのか(どうすれば失敗しないのか)という問いに対して答えを得ることを目指す。
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