2017 Fiscal Year Annual Research Report
An Institutional Trinity for an Environmental Treaty: The Case of the Minamata Convention on Mercury
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17J02193
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
宇治 梓紗 京都大学, 法学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 環境条約 / 環境ガバナンス / 国際機関 / 条約交渉 / 水俣条約 / 水銀政策 / UNEP |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度の最大の成果は、博士学位論文「水銀に関する水俣条約における三位一体制度の実現」(法博第219号)を完成させ、2018年3月に博士号が授与されたことである。本博士論文は、学術的な貢献が大きく期待できる特に優れた論文として、本学研究科長より表彰された。
博士論文を完成させるにあたって、9月には一週間のジュネーブ出張を行った。私の研究テーマである水銀に関する水俣条約が8月に発効したことを受けて、国連のジュネーブ局で第1回締約国会議が開催された。この会議にオブザーバーとして参加し、条約の動向を調査するとともに、複数のUNEP職員に聴き取り調査を行った。これにより、交渉議事録からは分からない交渉の舞台裏に迫ることができ、研究に大きな進展をもたらした。
また10月には、国際環境ガバナンスを専門とするマサチューセッツボストン大学のイヴァノヴァ教授を招聘し、日本人研究者との学術交流の機会として、本学において研究会を主催した。そこでは、私自身も博士論文の一部を英語で報告し、イヴァノヴァ教授に貴重なコメントをいただいた。イヴァノヴァ教授とは、2017年2月にアメリカの世界国際関係学会で知り合いになって以来、互いに研究成果を共有してきた。今回、自身の国外の学者とのつながりを、他の日本人研究者へと広げることができた。なお、博士論文の一部を英語にした論文は、理論及び分析を精緻化した上で、水俣条約研究の権威であるボストン大学のセリン教授のパネルへの招待を受け、2018年4月にサンフランシスコで開催された世界国際関係学会でも報告された。本学会論文は、既に国際雑誌に投稿され、査読結果待ちである。なお、本博士論文の第1章は、本年度に、本学研究科の紀要『法学論叢』に2号にわたって掲載され、博士論文全体の成果は、書籍として平成31年度の9月までに出版される予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
学位論文として博士論文を完成させたことに加え、平成29年度中にその成果を国外の学会で報告し、国際雑誌に投稿することができた。さらに、博士論文全体の成果を書籍として平成31年度の9月までに出版するために、出版社との話し合いを進めることができた。このことから、予想以上の早いペースで国内外に本研究の成果を公表することができると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度からPDに身分が変更することを受け、平成29年度の終盤には、これまで博士課程在籍中に一貫して行ってきた水俣条約研究から、新たな研究課題に一歩踏み出すことができた。水俣条約と好対照の事例として、気候変動条約に着目し、気候変動ガバナンスについて分析を行った。この研究成果は、“Climate Policy-making and Peer Pressure in the Regime Complex”として3月に開催された京都大学の国際政治経済研究会で報告され、6月末にはストックホルム大学におけるEnvironmental Politics and Governance学会において報告することが決まっている。
平成29年度中には具体的な成果として現れなかったが、平成30年度に達成すべき課題が三つある。第一に、博士論文をより広い読者に届けるための、博士論文の書籍出版である。専門家ではない読者も意識した上で、現在、博士論文の表現や構成について修正を行っている。第二に、現在査読中である、博士論文をベースとした英語論文を年度内に国際雑誌に掲載することである。第三に、取り掛かり始めたばかりである気候変動ガバナンスの分析を進めることである。国際学会への参加に加え、在外研究の機会も生かしながら、本研究を国際水準のものへと発展させていく予定である。
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Remarks |
自身の研究成果の国際発信のために2017年度の終わりに作成
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