2017 Fiscal Year Annual Research Report
哺乳類卵巣内オートファジー機構の解明による新規原始卵胞数上方制御法の開発
Project/Area Number |
17J02206
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
渡辺 連 岩手大学, 連合農学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 卵胞形成 / オートファジー / 原始卵胞 / 生殖能 / マウス / xCT / 卵胞 / 卵巣 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、「原始卵胞形成期(新生仔期)のオートファジーの誘導により、卵巣内原始卵胞数は増加する」という仮説をもとに、家畜生産やヒト生殖補助医療への応用を視野に、オートファジー誘導剤やxCT阻害剤の生体投与による新規卵巣内原始卵胞数の上方制御法を確立し、これらを用いた雌個体繁殖能向上および生殖寿命延長の検証を主軸に、新生仔期の原始卵胞形成にオートファジーが果たす役割を明らかにすることを目的とする。本年度は、1)オートファジー誘導剤の生体投与による新生仔期原始卵胞数の上方制御の検証。2) xCTKOマウスにおける新生仔期の卵巣内原始卵胞数およびオートファジー機構の検証。3) xCT阻害剤の生体投与による新生仔期原始卵胞数の上方制御の検討。4)新生仔期の原始卵胞数上方制御による生殖寿命の延長の検証(次年度)にむけた準備と中間解析を行った。オートファジー誘導剤の投与により新生仔期卵巣での顕著な原始卵胞形成の促進が確認された。これらの結果を国際学会の50th Annual Meeting of SSRと4th WCRBにおいて発表した。2)では新生仔期卵巣での原始卵胞形成の促進とオートファジーの誘導が確認された。また、原始卵胞から一次卵胞への顕著な移行抑制がみられた。3)では新生仔期卵巣での原始卵胞数の増加および一次卵胞数の低下傾向がみられた。これらの結果を、日本畜産学会第124回大会で優秀発表賞応募講演として発表し、優秀発表賞を受賞した。4)は現在進行中であり、誘導剤投与マウスでは、2ヶ月齢での顕著な原始卵胞数の増加と、2および6ヶ月齢での産仔数の増加傾向がみられている。これらの結果は、第36回受精着床学会と第59回日本卵子学会学術集会での発表が予定されており、要旨が受理されている。また、51th Annual Meeting of SSRに発表要旨が提出されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は、1)オートファジー誘導剤の生体投与による新生仔期原始卵胞数の上方制御の検証、2) xCTKOマウスにおける新生仔期の卵巣内原始卵胞数およびオートファジー機構の検証、3) xCT阻害剤の生体投与による新生仔期原始卵胞数の上方制御の検討として、各マウスで、生後12から108時間における①卵巣組織連続切片による原始卵胞数の計測、②卵巣組織における蛍光免疫染色ならびにウエスタンブロッティング法によるオートファジー(LC3B、LAMP1、p62)およびアポトーシス関連タンパク質(Caspase3、Caspase9)の発現解析を予定していた。4)新生仔期の原始卵胞数上方制御による生殖寿命の延長の検証(次年度)にむけた準備と中間解析については、2ヶ月齢時点の③繁殖能、④卵巣組織連続切片による各発育ステージの卵胞数、⑤排卵数、⑥卵体外発生能の評価を予定していた。1)、2)、3)では、①と②の解析がすべて完了している。また、4)に関しては現在進行中であり、上記で確立された原始卵胞数上方制御法を用いた新生仔マウスでの15ヶ月齢までの長期飼育を開始しており、実験用のマウスの確保を進めており十分な数のマウスが確保できている。また、中間解析として2および6ヶ月齢での③繁殖能の解析と、2ヶ月齢における④卵巣組織連続切片による各発育ステージの卵胞数の解析が完了している。⑤と⑥に関しては次年度に予定している13から15ヶ月齢マウスでの解析と並行して行い、若齢と老齢での差を確認する予定である。1)と4)の解析結果をBiology of Reproductionに投稿準備中である。また、2)と3)の解析結果もまたBiology of Reproductionに投稿を予定している。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画の1.xCTKOマウスにおいて新生仔期の卵巣内原始卵胞数とオートファジー機構の検証、研究の中核となる2.オートファジー誘導剤またはxCT阻害剤の生体投与による新生仔期原始卵胞数の上方制御の検証に関しては、解析が概ね完成しており、予想された結果が得られている。また、3.新生仔期の原始卵胞数上方制御による生殖寿命の延長を検証に関しては、中間解析の結果では、産仔数の増加傾向がみられており予定通り、長期飼育を続け、10ヶ月齢および13~15ヶ月齢での解析を進める。また、2.のxCT阻害剤の投与に関しては、新生仔期の短期間の投与により2ヶ月齢で原始卵胞の増加傾向が確認されたが、1.の解析でみられた一次卵胞への移行抑制も合わせて、性成熟以降も含めた長期的な投与の影響の調査により、新生仔期に限らない原始卵胞数の上方制御法の開発も想定している。加えてxCTの欠損により枯渇が予想されるシスチン/システインの制御によるアミノ酸を利用した原始卵胞数の制御系の構築に向けた発展も予想している。4.体外培養新生仔卵巣での原始卵胞形成とオートファジー機構の解析に関しては、上方制御個体における生体内での原始卵胞形成因子の動態解析に計画を変更する。5.内在性抗酸化機構欠損新生仔マウスへのオートファジー誘導による原始卵胞数への影響の解析に関しては、上記のxCTの長期投与やシステインの枯渇を利用した制御系の構築に変更を予定している。
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