2017 Fiscal Year Annual Research Report
時空間ボラティリティモデルの開発と不動産リスクの定量化
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17J02301
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
佐藤 宇樹 東北大学, 経済学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 空間計量経済学 / ボラティリティ / GARCH / 空間重み行列 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は2つの空間計量経済学モデルの開発を行った。それらは、空間一般化条件付き不均一分散(S-GARCH)モデルと時空間条件付き不均一分散(ST-ARCH)モデルである。 S-GARCHモデルではSato and Matsuda(2017)で提案した空間条件付き不均一分散モデル(S-ARCH)モデルの一般化を実現した。S-GARCHモデルではモデルのボラティリティを周辺地域のリターンの2乗とボラティリティを用いて定義している。この拡張によって、S-GARCHモデルではS-ARCHモデルでは捉えることの出来ない周辺地域からの影響の大域的な空間相関を推定することが可能になった。モデルに含まれるパラメーターは擬似最尤法によって推定される。さらにその擬似最尤推定量の一致性と漸近正規性を証明した。その後、モンテカルロシミュレーションを用いて、擬似最尤推定量の小標本特性を明らかにした。最後に、関東地方の地価データを用いて、実データ解析を行い、地価のボラティリティの空間相関は大域的であり、ボラティリティクラスタリングが存在することを明らかにした。 ST-ARCHモデルでは空間モデルであるS-ARCHモデルを時空間モデルへ拡張した。ST-ARCHモデルには2つの特徴があり、それらはボラティリティを、時空間相関を考慮して定義した点とモデル内の誤差項の相関も考慮した点である。モデルのパラメーターは擬似最尤法を用いて推定される。モンテカルロシミュレーションではモデルの小標本特性を調べた。次に、実データ解析としてTOPIX core 30内の企業の株式のリターンを用いて、実証分析を行った。推定結果から同時点の他企業からの影響は過去の自身や周辺企業からの影響よりも大きいことがわかった。また、ST-ARCHモデルの予測誤差はGARCHモデルよりも小さいことがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画の通り、時空間ボラティリティモデルの開発を行い、地価や株式へ応用することができた。また、その成果を学会、ワークショップ等で発表することで、フィードバックを得ることができ、モデルのさらなる発展の方向が明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度の課題は本年度提案したST-ARCHモデルのパラメーターを時変にすることである。実証分析の結果から、企業間の空間相関は時間を通して一定ではなく、時間に応じて変化しているのではないかという疑問が生じた。なぜならば、分析に用いるデータの期間が長くなると、ST-ARCHモデルよりもGARCHモデルのモデルフィットがよくなるからである。これは企業間の空間相関関係が時間を通して一定ではなく、時間を通して変化しているため、長期では空間相関構造を一定に定めたST-ARCHモデルの当てはまりが悪くなっているからだと考えられる。この問題を解決するために、空間相関関係が時間によって変化するモデルを提案する予定である。
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