2017 Fiscal Year Annual Research Report
Λハイパー核γ線分光法を用いた荷電対称性の破れの研究
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17J02360
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
藤田 真奈美 東北大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | トリガー検出器群の開発 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的はストレンジクオークを含むハイペロンを持った原子核のうち質量数が4の系における荷電対称性の破れの検証にある。これを解明する為、J-PARCにおいてガンマ線分光実験(E63)を実施予定であり、そのための準備を進めている。 本年度は、本実験の標的下流に設置する散乱π中間子同定のためのエアロジェル検出器の設計、試作機の製作を行った。本検出器は反応同定を行う検出器として実験時のトリガーに用いられ、オーバーキルや誤検出は実験の検出効率やデータの信号雑音比に関わる非常に重要な検出器である。検出器作成にあたり、エアロエジェルの屈折率、体積、形状のデザインをシミュレーション等を駆使して行った。検出器の設置場所は磁気スペクトロメータに近く、磁場の影響を強く受けることが予想される。従って磁場の影響を軽減する為ファインメッシュ型の光電子増倍管を用いることとした。製作した試作機は2017年6,7月にJ-PARC K1.8ビームラインにおいて実際のビームを用いた性能評価を行った。さらに、この性能評価実験では本実験で導入を検討している新たな信号処理用回路(ADCモジュール)の性能テストも同時に行った。結果としてエアロジェル検出器の性能は期待通りのもので実機の製作に取り掛かれる段階である。一方で信号処理回路には問題点が見つかり、実用に向けて改良が必要であるとわかった。 また、入射粒子ビームの分光のための磁気スペクトロメータの上流に設置予定のビーム粒子秘跡検出器としてファイバートラッカーの実機製作も進めてきた。これは実機の製作が完了し動作確認へと移行している段階である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本実験で新たに必要な3つの検出器(エアロジェル検出器、ビームファイバートラッカー、ビームホドスコープ)のうち1つは実機完成、もう1つは直ちに実機製作に取りかかれる段階にある。信号処理回路(新ADC)については問題点の洗い出しが完了し、回路の改良を進める。時間との兼ね合いを見て、別策を採択することも可能であると考えるためこれは大きな問題とはならない。さらに並行して、本実験で用いる標的の製作を始めている。これは特殊な方法で酸化リチウムの粉末を結晶化するものである。知識、技術共に皆無の状態であったため要する時間の不確定要素が大きかった。しかしこれまでに我々は結晶化までを成功させている。実験に要求される大きさの結晶を作成するまでには至ってないが、おおよその見通しが立てられる段階にあることが大きな進展である。以上のように実験準備は非常に順調に進行している。ただし、J-PARCハドロン実験施設におけるK1.1ビームラインの建設が遅れていることが予期せぬ出来事である。
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Strategy for Future Research Activity |
まだ着手していない検出器(ビームホドスコープ)の設計、製作を行う。標的の製作方法を確立し、実験に十分な体積を有する結晶を製作する。データ解析時に標的結晶中での粒子のエネルギー損失が問題となる。これを補正するため、本実験とは別にこれを測定する必要がある。原子力研究所のタンデム加速器を用いた実験を現在検討中である。ビームラインが完成した暁には実験室に全ての検出器を配置し、その動作と性能の確認を行う。ビーム利用がアサインされた後、データを取得、解析を行う。結果を論文にまとめ報告する。
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Research Products
(2 results)