2018 Fiscal Year Annual Research Report
ニューロテンシンを介したウシの受精現象調節メカニズムの解明と応用
Project/Area Number |
17J02431
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
梅津 康平 東北大学, 農学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | ウシ / 精子 / 卵母細胞 / 胚盤胞 / IVMFC / ニューロテンシン |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究の目的はニューロテンシン(NT) によるウシ精子の機能制御によって受精ならびに初期胚発生が受ける影響を解析することである。 昨年度の研究により確立したウシ体外成熟培養系および体外受精・体外発生培養系を活用し、体外培養下における受精現象に対する精子へのNT添加の影響を解析した。その結果、体外受精培地にNTを添加することにより、受精後の卵割率が有意に向上することが明らかになった。この結果は、NTを介した精子機能の向上が実際に受精率を上昇させたことを示唆している。また、その後の胚盤胞形成率に関しても、NT添加により増加傾向が見られた。さらに、初期胚の質を評価する1つの指標である胚盤胞の細胞数を解析した結果、内部細胞塊および全細胞数が対照区と比較してNT添加区において有意に増加していた。以上より、体外受精培養系へのNT添加はウシにおける受精および初期胚の質を向上することが示唆された。次に、ウエスタンブロテッイング法およびRT-PCR法により精子、精巣ならびに卵母細胞および卵丘細胞のNT結合能(受容体)の有無を検証した。その結果、NT受容体1、2は精子ならびに精巣のみに発現し、卵母細胞および卵丘細胞では発現していないことが明らかになった。この結果はNTが精子上の受容体を介して精子のみに作用して、この精子への作用を通じて受精効率および初期胚の質を向上させたことを示唆している。 以上より、本年度の研究によりNTは精子上のNT受容体1、2を介して精子に作用し、受精率および胚盤胞の細胞数を向上させることが解明された。この結果は、雌性生殖器で発現し、精子機能を制御しているNTがウシにおける新規の受胎性関連因子であるという可能性を支持しており、ウシの人工授精技術への応用の第一歩となる成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画よりもやや遅れているもののウシにおける体外成熟培養系および体外受精・体外発生培養系を用いて、NT によるウシ精子の機能制御によって受精現象ならびに初期胚発生が受ける影響を初めて明らかにした。この研究成果は、国際学術雑誌に投稿し、査読を経て、受理され(Umezu et al., 2019)、当初の予定であった最終年度における研究成果のとりまとめよりも早く研究成果を世界に発信し、社会に還元することができた。以上より、総合的にはおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究により、体外培養下においてNTを介した精子機能の向上が実際にウシの受精率を上昇させることが明らかになったので、今後は、生体内での受精現象に対するNTの影響を明らかにすることを試みる。実際に人工授精を行った複数の雌ウシを準備し、子宮内へのNT添加区と非添加区に分け子宮かん流によって未受精卵・受精卵を回収し、両区間での受精率と受精卵の形態的正常率を比較する。さらに、顕著な低受胎性を示す複数の雌ウシに対してNTを用いた新たな人工授精法を行い、NTを利用することによるウシ人工授精後の受胎率改善の可能性を検証する。
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