2017 Fiscal Year Annual Research Report
シースルー立体ディスプレイによる光線操作を高度化した次世代視覚インターフェイス
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17J02464
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
山口 祐太 東京農工大学, 大学院工学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 立体ディスプレイ / 光線操作 / 視覚インターフェイス / インテグラルイメージング / 背景シフト / パンチルト |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者らは、シースルー立体ディスプレイによる背景光線の操作について研究を行った。シースルー立体ディスプレイを実現するための光学系として、代表者らは以前に、対称インテグラルイメージング光学系を提案している[Y. Takaki, et al., Opt. Lett. 40, 1873 (2015), Y. Yamaguchi, et al., Appl. Opt. 55, A144 (2016)]。この光学系を用いると、シースルー画像に立体像を重ねて表示できる。第1年度目は、この光学系を用いた背景光線操作として、(1)シースルー画像を任意の奥行き位置に結像する機能、および(2)シースルー画像のシフト機能を実現した。シースルー画像の結像機能を実現する光学系として、非対象インテグラルイメージング光学系を提案した。これは、以前に提案した光学系では対称に配置されていたレンズアレイ群を、非対称に配置することで実現した。レンズアレイ同士の間隔を適切に設定することで、ある奥行にある背景を、任意の奥行位置に結像できる。市販のレンズアレイを用いてスケールアップモデルを構築し、この機能が実現できることを確かめた。シースルー画像のシフト機能は、対称インテグラルイメージング光学系の構成をもとにした、5枚のレンズアレイからなる光学系により実現できる。2枚のレンズをレンズピッチ程度シフトして光線を偏向し、シースルー画像がシフトする。レンズアレイのレンズピッチが小さければ、画像のシフトに必要なレンズアレイのシフト量も小さくすることができる。この機能は、視覚インターフェイスでの利用のみならず、高速に視線移動が可能なカメラにも応用できる。市販のレンズアレイを用いたスケールアップモデルによって、本機能が実現できることを確かめた。また、レンズアレイをカスタムで作製し、シフト量が拡大できることも確かめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
採用第1年度の研究実施計画において実施するとしていた点について、おおむね達成できたため、本研究の現在までの進捗状況を「おおむね順調に進展している」と評価する。 シースルー画像の結像機能については、市販のレンズアレイを用いたスケールアップモデルを構築して実験を行い、実現できることを検証した。また、光学設計ソフトウェアを用いた光線追跡シミュレーションによる光学系の最適化についても実施し、結像特性が向上することを確認した。結像可能な背景物体の位置や結像位置の範囲については、光学マトリックスを用いた計算により数式で示した。これらの成果は、査読付き論文誌に発表済みである。 背景光線に対する操作としてのシースルー画像のシフト機能についても、市販のレンズアレイおよび特注で作製したレンズアレイを用いたスケールアップモデルによる実験を行い、実現できることを確かめた。レンズアレイのシフト量とシースルー画像のシフト量の関係を幾何光学にもとづいて数式で記述し、この関係に従って画像がシフトすることを実験で確かめた。市販のレンズアレイを用いたスケールアップモデルでは、提案した方法によって画像がシフトすることを確かめた。このスケールアップモデルでは、実現できる光線の偏向角が数度程度と小さかったため、より大きい偏向角を実現できるレンズアレイを作製した。このレンズアレイを用いた実験では、偏向角が25度程度まで拡大することを確かめた。また、光学系の解像度についても評価を行った。これらの成果は、国際会議1件、および国内会議2件において発表済みである。
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Strategy for Future Research Activity |
採用第1年度目の研究において、背景光線に対する操作として、シースルー画像の結像機能とシフト機能の基本的な実現方法について明らかにすることができた。これらの機能はスケールアップモデルによる検証にとどまっているため、実サイズの光学系における実現を進めていく。実サイズの光学系においては、これらの機能の状態を動的に変更するため、光学的なパラメーターを変更可能なシステムを構築することを検討する。また、視覚インターフェイスとしては立体像のリアルタイム表示も必要であるため、これを実現するディスプレイの実装方法についても検討を進める。シースルー画像のシフト機能は、視覚インターフェイスの機能の一部として提案を行ったが、これまでの研究の過程でカメラの高速な視線移動を実現する方法として有効であることが分かった。カメラの高速な視線移動の実現は、監視カメラの高性能化や、人工知能への入力としての大量の画像情報の取得を可能にすると考える。光線操作技術を、視覚インターフェイスのような画像の出力だけではなく、入力に応用することについても検討していく。
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