2018 Fiscal Year Annual Research Report
柔軟なd-π共役プラットフォームを有する金属錯体の異方的集積制御に基づく機能創出
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17J02581
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
前田 貴星 大阪大学, 基礎工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 異方性分子集合 / 結晶発光 / 燐光発光 / 超分子集合 / 気水界面 / 超分子キラリティ |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者は新たにペンタメチレン基を有するtrans-ビス(サリチルアルジミナト)白金錯体が結晶状態でオレンジ色発光を示すのに対し、結晶の周りを流動パラフィンで覆うことで発光色が黄緑色に変化することを見出した。結晶状態での発光特性を制御する方法として結晶構造や結晶サイズを変化させることが一般的に知られているが、本研究ではX線結晶構造解析、発光寿命解析、理論計算により結晶構造や結晶のサイズが変化することなく結晶表面と外場の流動パラフィンが相互作用することで発光特性を制御可能であるということを明らかにした。このような新しい結晶発光特性の制御法の開拓は次世代の発光デバイス創出のための基礎研究として非常に重要であり、分子構造や分子集合様式を変化させずに発光特性を制御できるような材料はデバイスの高い耐久性を実現する潜在的な可能性を秘めている。 また、申請者は、長鎖アルキル基を有するtrans-ビス(サリチルアルジミナト)白金錯体がボルテックス気液界面上で分子集合することで樹網状集合体を形成することが明らかにした。粉末X線回折、発光スペクトル、円二色性スペクトルなどからこの樹網状集合体は過去に報告された熱力学的安定晶とも速度論的安定晶とも異なる新たな結晶多形であることが明らかとなり、ボルテックスの方向に依存した超分子キラリティを示すことが明らかとなった。このようなボルテックス気液界面上で特異的な樹網状集合体を形成する例は他になく、新たな分子集合制御法として期待される。また、ボルテックスの方向によって超分子キラリティを誘起することが可能なこの錯体は円偏光発光などのキラル物性への応用可能性を秘めており、今後白金錯体の円偏光発光特性などを調査していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
申請者の研究目標は様々な外部刺激・外部環境によって分子に特異的な異方性集合を誘起し、分子集合体としての新規機能の発現及び機能制御である。本年度はNIMSとの共同研究によって、気液界面上で分子集合させる技術を用いることができた。その手法により、当研究室オリジナルの分子が特異な異方性分子集合を発現することを見出したことにより当初計画していたよりもよりインパクトの大きい分子集合制御が可能になった。
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Strategy for Future Research Activity |
NIMSとの共同研究によって、気液界面上で特異な異方性分子集合を発現することに成功したが、まだその集合体の機能性に関して深く探求することはできていない。したがって今後は新たに発見した白金錯体の特異な樹網状集合体の光学特性や分子構造を明らかにすることを目標とする。 具体的には、気液界面上で形成した集合体を石英基板に転写することで光学特性を測定することを試み、また同様にx線結晶構造解析によって樹網状の集合体の中で白金錯体がどのような構造を取っており、何が駆動力となってその特異な分子集合体を誘起したのかを明らかにする。
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