2018 Fiscal Year Annual Research Report
麹菌異種生産システムを基盤とする休眠型リボソームペプチド二次代謝物の開拓
Project/Area Number |
17J02635
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
森下 陽平 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 天然物化学 / 生合成 / リボソームペプチド / 異種発現 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、麹菌による異種発現系を用いて、様々な糸状菌のゲノム上にコードされる未知のリボソームペプチド二次代謝物(RiPPs)を開拓し、医薬品開発へ応用することを目的とした。前年度では、糸状菌のドラフトゲノム解析による新規RiPPsの生合成に関与する遺伝子クラスターの探索と、昆虫内生糸状菌Arthrinium sacchari等のゲノム上のクラスターの麹菌異種発現系の構築に着手したが、目的化合物の取得には至らなかった。本年度は、麹菌と系統的に近いPenicillium soppi のゲノム上に見出したPsorクラスターの麹菌異種発現に取り組んだ。 バイオインフォマティクス解析により、Psorクラスターに類似したクラスターがPenicillium属菌のみならずAspergillus属およびIsaria属菌に広く保存されていることがわかった。それらいずれのクラスターにも共通して、RiPPs生合成に必須とされている前駆ペプチドとDUF3328タンパク質に加え、チロシナーゼおよび2つのメチル基転移酵素がコードされており、遺伝子クラスターを構成する遺伝子であることが推測された。 そこでPsorクラスター内の5つ全ての遺伝子を導入した麹菌株を作製し、その代謝物の解析を行った。研究室で汎用される液体培地に加え、米固体培地等様々な培養条件を検討したが、目的のRiPPsの検出には至らなかった。現在、麹菌以外の異種ホストを用いた生産系の構築に着手している。 また、新たな遺伝子資源確保のためにドラフトゲノムシーケンス解析を行った。ガガンボ、ハサミムシ内生糸状菌Penicillium funivulosum、Isaria tenuipes, Neonectria ramulariae,より、特徴的なアミノ酸配列をもつ前駆ペプチドを有する興味深いクラスター定RiPPs生合成遺伝子クラスターを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度においては、昨年度に見出したPsorクラスターに関して、異なる属の糸状菌ゲノム上の類似クラスターとの比較ゲノム解析により、5つの生合成遺伝子がRiPPs生産に関わると推測し、それら遺伝子を導入した麹菌株を作製した。昨年度の経験から、異種ホストである麹菌と系統的に近いPenicillium 属菌の保有するクラスターに取り組み、詳細な条件検討を行ったものの、現時点では目的物質の取得に至らなかったため、当初の予定より遅れている。一方で、独自に保有する昆虫内生糸状菌のドラフトゲノム解析およびゲノムマイニングを行い、新たな推定RiPPs遺伝子資源を見出している。 本研究課題は先行研究が少なく、糸状菌RiPPs生合成の知見も乏しいため、本研究で得られた結果は来年度以降の研究方策を立てる上で重要な知見である。
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Strategy for Future Research Activity |
異種発現系による物質生産においては、用いる異種ホスト株が目的物質の生産の有無や生産量を大きく左右する。そのため、本年度で麹菌異種発現系の構築に取り組み、目的のRiPPsの生産が確認されなかったPsorクラスターに関しては、異なるホスト(Aspergillus nidulansやA. nigar) による発現系の構築を試みる。 一方で、これまで産物が検出できていないクラスターは、もともとゲノム上で機能を失っている可能性があるため、並行して、ゲノムマイニングにより見出したその他推定RiPPs遺伝子クラスターに関しても、麹菌異種発現系の構築に取り組むことで新規RiPPsの獲得を目指す。 これまで報告のある糸状菌RiPPsの異種生産においては、麹菌異種ホスト内に類似遺伝子クラスターが保存されている場合においてのみであることから、糸状菌RiPPs生合成には遺伝子クラスター内の遺伝子以外の要素が重要である可能性がある。そこで、本来の宿主内において標的としたクラスターの遺伝子を過剰発現させることで、目的RiPPSの取得にも取り組んでいく予定である。
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Research Products
(5 results)