2018 Fiscal Year Annual Research Report
自然環境下のトランスポゾンの脱抑制現象の把握とエピジェネティックな修飾動態の解析
Project/Area Number |
17J02659
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
伊藤 佑 京都大学, 生態学研究センター, 特別研究員(PD) (70780906)
|
Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
|
Keywords | トランスポゾン / 反復配列 / 自然環境下 / エピジェネティクス / エピゲノム / 植物 |
Outline of Annual Research Achievements |
1、自然環境下でのトランスポゾンの動態の捕捉 自然環境下において、トランスポゾンのRNA発現やヒストンのメチル化などエピジェネティックな動態がどのような動態にあるか調べるため、兵庫県多可郡に存在するハクサンハタザオ (Arabidopsis halleri subsp. gemmifera)の自然集団を用いた2週間おきの定期的なサンプリングを前年度から引き続き行った。採取された葉からは、RNAとクロマチンの抽出を行い、RNA-seqやChIP-seqによるRNA発現と、ヒストン修飾状態の解析を進めている。その結果、2年間にわたる野外におけるトランスポゾンのRNA発現、またヒストン修飾の季節動態が明らかになりつつある。 また、上記の実験に先立って実施された、野外における全ゲノムDNAメチル化の季節解析のデータについても解析を行った結果、季節の変化に応じてメチル化レベルが変化する領域の存在が明らかになった。その中には反復配列が含まれ、遺伝子座のRNA発現とDNAメチル化レベルに逆の季節パターンが見られた。これらの結果に関しては、論文にまとめ現在投稿中である。 2、実験室での環境操作実験 上記の野外での実験に加え、実験室での環境操作実験を行なった。具体的には、日長・昼夜の温度を操作できるインキュベーターにより、種子から発芽させたハクサンハタザオ個体に、異なった光・温度環境のパターンを与えた。これらの植物体からも葉を採取し、RNA、クロマチンの抽出を行った。これらのサンプルに対してChIP-seqを行った結果、異なる環境条件によってヒストン修飾のパターンが異なる可能性のある領域が検出された。現在は、これらと自然環境下でのデータを比較することにより、どのような環境刺激がエピジェネティックな修飾動態に影響するのかの解析を進めている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ハクサンハタザオの自然集団を用いた定期的なサンプリングは無事完了し、2年間にわたる野外におけるトランスポゾンのエピジェネティックな状態の季節動態が明らかになりつつある。また、実験室での環境操作実験も実施した。このように、野外と実験室の双方での実験を進める研究計画は順調に進展していると考える。また、分子機構のより深い理解に向けた、海外での共同研究も進行中である。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後はRNA-seqやChIP-seqにより得られたデータの解析を進め。ゲノムワイドな解析により、野外のトランスポゾンのエピジェネティックな動態の包括的理解を進め、論文としての構成を行う。 また、分子機構のより深い理解に向けた海外での共同研究も引き続き継続し、本研究課題の更なる発展を試みる。
|