2017 Fiscal Year Annual Research Report
Molecular mechanism of the Warburg effect in colon cancer
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17J02701
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
倉永 祐希 岐阜大学, 連合創薬医療情報研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | Warburg効果 / 発がん |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では解糖系の律速酵素である、ピルビン酸キナーゼM(PKM)遺伝子の選択的スプライシングを行っているPTBP1と協働で動くスプライサーの同定・機能解析をし、発がん課程でPKM1からPKM2へとスイッチングするメカニズムの解明をすることでがん特異的エネルギー代謝機構であるWarburg効果の成立機構を明らかにすることが目的である。さらに発がんへの関与についても検証する。 本年度はPKM遺伝子スプライサーのWarburg効果を介してのがん病態への関与を1、正常組織におけるSRSF3の発現解析、2、 がん細胞におけるhnRNPA1とSRSF3のPKMスプライサーとしての機能解析、3、 がん細胞におけるhnRNPA1とSRSF3の増殖に関連する因子としての機能解析の3点について明らかにした。 具体的には、1では正常組織におけるSRSF3のスプライシングバリアント(タンパクの大きさに応じてFull・Shortと表現)のFull SRSF3に対するShort SRSF3の発現の比はヒトがん細胞株と比較して非常に高いことが分かった。つまり正常組織にSRSF3のタンパク発現が高くても、それは他のmRNAスプライシングに関与してないShort SRSF3である可能性が示唆された。2については大腸がん細胞においてhnRNPA1やSRSF3はPTBP1と共局在し、PKM遺伝子スプライサー群として働くことが明らかとなった。3では大腸がん細胞においてこれらのスプライサーをノックダウンすると、pAktやpErk、PI3Kなどの増殖関連シグナルの発現抑制に伴う増殖抑制が起こっていることが明らかとなった。現在論文を執筆し、査読を受けているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
PTBP1、hnRNA1、SRSF3の3つのスプライサーが協働してPKM遺伝子のスプライシングを行っていることが明らかとなったが、これらのタンパクをsiRNAにおいてノックダウンした時の影響についても詳細に解明することができた。 具体的には、1、これらのタンパクをノックダウンすると、細胞増殖が抑制され(トリパンブルー染色結果、PI3KやAktの抑制より)、2、その時の細胞はオートファゴソームを複数形成しており(電子顕微鏡観察結果より)、3、PKM2優位だったがん細胞がPKM1優位になることで、TCAサイクルを使いATPをより多く産生するようになり(メタボローム解析結果より)、4、ミトコンドリアの膜ポテンシャルは有意に高いレベルになる(マイトトラッカー染色結果より)ことが明らかとなった。 以上のことから、当初計画していた以上の実験をすることとなったが、予期した以上の結果を得ることができ、がん特異的エネルギー代謝機構であるWarburg効果の成立機構の解明に貢献した。
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Strategy for Future Research Activity |
hnRNPA1やSRSF3などのスプライサー遺伝子とmicroRNAとの関連を分子レベルで明らかにする。 具体的には1、MicroRNA-1がPKMスプライサー遺伝子をターゲットしているかの検証を行う。MicroRNA-1の標的とするPKMスプライサー遺伝子を見つけ出す。ルシフェレースアッセイ法を用いてmiR-1が候補遺伝子を実際にターゲットしていることを証明する。次点としては2、MicroRNA-1による細胞増殖抑制効果の評価を行う。がん細胞に対してmicroRNA-1を導入した時に起こる細胞増殖抑制効果をWestern blot法、アレイ解析を行う。場合によっては各細胞死に応じたinhibitorなどを用いて検証する。
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