2018 Fiscal Year Annual Research Report
ニュートリノ質量の起源解明に向けた混合角θ23の精密測定
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17J02714
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
平本 綾美 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | ニュートリノ / 原子核乾板 / J-PARC |
Outline of Annual Research Achievements |
長基線ニュートリノ振動実験であるT2K実験では、ニュートリノと原子核の反応からくる不定性が系統誤差の一因となっている。本研究では、原子核乾板というサブミクロンの位置分解能をもつ検出器を用いることで、水標的によるニュートリノ反応の精密測定を行い、ニュートリノ反応由来の不定性を削減することを目的としている。 2019年に予定されている本実験にさきがけ、茨城県のJ-PARCにて2017年10月から2018年5月にかけ、約4kgの水標的に反ニュートリノビームを照射するテスト実験が行われた。このテスト実験では2017年に本研究において新しく制作したシンチレーションファイバートラッカーが用いられた。原子核乾板は時間情報を持たない検出器であるため、原子核乾板中の飛跡を後方にあるミューオン識別用の検出器と接続するには、位置分解能が高くかつ時間情報を持った検出器が必要となる。シンチレーションファイバートラッカーはこの役割を担っており、250μm程度の高い位置分解能によって検出器の飛跡同士を接続することを可能とした。 また、本研究ではシンチレーションファイバートラッカーによる飛跡接続に加え、原子核乾板中に記録されているニュートリノ反応の解析を行った。原子核乾板中に記録された荷電粒子の位置および角度や、飛跡の濃さといった情報から、ニュートリノ反応によって生成される二次粒子の種類や運動量などを測定する手法を開発した。さらに、モンテカルロシミュレーションを用いることで、測定したデータとシミュレーション結果の比較等も行った。水標的と原子核乾板を用いた測定は我々のグループ独自のものであり、ここで開発された手法は本実験の解析においても用いられる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年5月までに取得したデータを解析するにあたり、シンチレーションファイバーを用いた検出器間の飛跡接続において、荷電粒子のヒット情報を再構成する際いくつか検出器面での問題に遭遇した。しかし、いずれも再構成アルゴリズムを工夫することによってある程度の性能に達することに成功し、今後の課題等も見つけることができた。また、原子核乾板のスキャンには当初想定していたよりも時間を要したが、こちらも並行してモンテカルロシミュレーション等の準備を進めることで、なるべく早く測定結果を出すように努めた。この結果、テスト実験の結果について2019年中に学術論文を発表する見通しが立った。 また、テスト実験の解析に加え、2019年に行われる予定である本実験に向けた準備も行った。検出器の大型化に伴う新しい検出器の設置を行ったほか、本実験での解析を素早く進めることができるよう、これまでにテスト実験で開発してきた手法を用いてソフトウェア面での準備も進行中である。以上より、こちらはビーム照射に向けて順調に進んでいると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はまずはじめに、テスト実験で測定されたニュートリノ反応によって生成される二次粒子の測定結果を早急にまとめる。測定結果には、ニュートリノ反応によって生成される二次粒子の多重度や、二次粒子の種類の識別および角度や運動量の情報が含まれ、これらを学術論文として提出する予定である。 さらに、テスト実験の結果をもとに、2019年の本実験でどのような物理測定を行うことができるかをモンテカルロシミュレーション等で詳細に検証していくことが重要になる。その際、T2Kのエキスパートたちと協力し、T2Kでのニュートリノ振動解析に我々の結果がどのようなインパクトを与えるかまで含め検証を行う。
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Research Products
(4 results)