2017 Fiscal Year Annual Research Report
抗加齢を目標としたヒト卵巣における新規酸化ストレス経路の解明
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17J02723
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
秋野 なな 東京大学, 大学院医学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 抗酸化 / 卵巣の加齢 / フマル酸ジメチル |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度は、加齢による卵巣機能低下を抑制するために、主要な酸化ストレス応答システムであるNrf2/Keap1経路に着目し、ヒト卵巣顆粒膜細胞におけるNrf2/Keap1の存在を示し、Nrf2分解阻害剤であるフマル酸ジメチルの卵巣機能への影響を検討した。 ヒト体外受精の検体から分離した顆粒膜細胞にフマル酸ジメチルを添加し培養し、Nrf2やKeap1、抗酸化物質のDNAやタンパクレベルでの変化を定量的PCR法、ウェスタンブロット法などによって検討した。また、過酸化水素の添加により酸化ストレスを受けた顆粒膜細胞と、フマル酸ジメチルを添加し細胞を酸化ストレスから保護した細胞に対して細胞蛍光免疫染色法を施し、酸化ストレスを可視化した。Nrf2に対するSiRNAを用いた実験でNrf2の機能を減弱させ、酸化ストレスや抗酸化物質の定量も実施した。 以上の結果より、フマル酸ジメチルはヒト顆粒膜細胞に対し酸化ストレスへの保護作用をもつことが示された。また今後はテロメア長やTERT活性にも着目し、定量的PCR法、ウェスタンブロット法、卵巣の組織免疫染色法、ELISA法による検討を実施する。 さらに、昨年度は正常マウスならびに加齢マウスにフマル酸ジメチルを経口投与し、コントロール群と比較して卵巣組織切片における酸化ストレスレベルや卵胞数の検討を開始した。加齢マウスはだいたい1歳齢を目安とし飼育を開始している。フマル酸ジメチルの投与時期による違いや、飼育日数の違いによる卵巣機能の変化に着目し、定量的PCR法、ウェスタンブロット法、卵巣組織免疫染色法を予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度はヒト体外受精検体からヒト顆粒膜細胞を単離培養し実験に用いた。体外受精の検体の状態が良好、かつ一定数以上ないと実験が困難な状況で良好なサンプルが得られ、順調に実験が遂行されたと考える。また、フマル酸ジメチルは他のマウス実験において多数使用されている経緯があるが経口投与での報告はそれほど多くなく、投与経路の検討も必要であった。経口投与で問題なく投与が可能であった。以上の理由で研究手法やサンプルの入手が順調に進めると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
フマル酸ジメチルのマウスにおける研究と並行し、ヒトにおける影響を検討する。フマル酸ジメチルは2016年末より本邦で多発性硬化症に対する使用が認可されたため、同薬物投与患者における卵巣機能や妊孕能を解析し、卵巣保護目的でフマル酸ジメチルのヒトへの投与が有用かどうかを検討する目的で、当院ならびに協力施設から多発性硬化症に対して同薬物を投与予定の若年女性患者をリクルートしている。フマル酸ジメチルの投与前後における血中Nrf2の濃度ならびに、卵巣予備能の目安になると考えられている抗ミュラー管ホルモンの測定、超音波検査による卵巣体積の計測、また問診による妊娠分娩歴などを調査し、フマル酸ジメチルが若年女性において卵巣保護的に作用するかを検討する。
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