2017 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17J02745
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
福田 真之 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 量子トロイダル代数 / D型箙ゲージ理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年度は論文を3本執筆した。それぞれに関して大まかな説明をすると、最初2本はDing-Iohara-Miki代数と呼ばれる代数を用いて、5次元の超対称ゲージ理論の解析を行った。特に1本目では、この代数に関係する可積分性を考察するために、R行列という無限の大きさの行列を部分的に計算した。またそのR行列のパラメータを特殊な値にとることでこのR行列に関係した可積分系がCalogero-Sutherland模型というよく知られた模型 に帰着することを見た。また2本目の論文では、D型の箙ゲージ理論と呼ばれるゲージ理論を解析した。そのために上で述べた代数において、ある種の境界作用素を導入する必要があることに気づき、実際に構成した。この境界作用素をもちいることで、D型箙ゲージ理論の分配関数が、その代数の表現論 から計算できることを発見した。 3本目の論文に関しては、少し異なったテーマについて研究した。とくに共形場理論において Conformal Defectと呼ばれる欠陥がある状況で、場の演算子の期待値がどのように振る舞うか、ということを調べた。Embedding Formalismという形式を用いて計算することで、対称性のみからその期待値を決定した。また、AdS/CFT対応において、一次元高い空間での場をその境界 に住む共形場理論の場から構成できる、という知られている事実が、Radon変換という数学の特殊な応用として理解できることをより厳密に定式化した。 また以上の内容に関して、日本大学、東京工業大学でセミナーを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
上で述べたD型箙ゲージ理論のインスタントン分配関数のDing-Iohara-Miki代数の表現論からの導出に関しては、共著者である韓国KIAS所属のBourgine氏、および申請者の受け入れ教官である松尾准教授と春に日本で集中して議論ができたことが大きい。Bourgine氏は当初、申請者が考えていたD型箙ゲージ理論の構成法に置ける問題点を指摘し、それによってより良い方法を発見することができた。 また、Conformal Defectについての論文では、共著者である西岡氏が、既存の文献の不十分な点を逐一指摘してくださったことが大きかったと思われる。 またこれはまだ論文になっていない仕事であるが、上で述べたDing-Iohara-Miki代数に関連したソリトン系がどうなっているかということを現在研究しており、そちらでも十分な進展があった。大きい理由としては、夏に参加したサマースクール及び研究会にて、研究分野が非常に近い人たちと議論できたことが挙げられる。特に、フランスIPhTのPasquier教授、東京大学数理科学研究科の白石教授らの有益なアドバイスにより、自分の研究の課題が明確に認識できたことが大きい。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、直近の問題として我々がD型箙ゲージ理論を構成する際に用いた方法が、Macdonald多項式の観点からどう解釈できるかという点は解明されるべき問題である。特に、同様な方法でC型の箙ゲージ理論が構成できるはずであるので、現在知られているC型のMacdonald多項式に関する予想が、ゲージ理論的観点から導出をできるかを確認したい。より具体的にはC2型のMacdonald多項式がA4型のMacdonald多項式の適当な線形和でかけることが予想されており、その係数をゲージ理論の立場から導く、というのが目標である。 また現在進行形で研究している、Ding-Iohara-Miki代数に関係したソリトン系の研究も完成させたい。このソリトン系の問題は、量子的なレベルで広田方程式を満たすが、量子的なレベルではそのタウ関数がソリトン的な振る舞いを持たないことである。そのため、古典極限での振る舞い方を正確に追跡する必要があるが、それを知るためにははMacdonald過程とよばれる確率過程についての知識が必要となる。そのため、まずはその勉強を集中して行い、その後にこの問題を考察して行きたい。 また、その楕円変形も今後の課題である。Ding-Iohara-Miki代数はその楕円変形が提唱されているが、全体でコンセンサスが取れているとは言い難い。よって、まずは何が楕円変形として妥当かということを考察した上で、適切な楕円変形に関連したソリトン系を考えたい。上で述べた問題と比べて、楕円変形は多くの点で非自明な変形がなされるが、Litvinovのベーテ方程式と呼ばれる式を指針に問題に取り組んで行きたい。
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Research Products
(5 results)