2017 Fiscal Year Annual Research Report
白麹菌のクエン酸高生産機構の解明と有機酸発酵への応用
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17J02753
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
門岡 千尋 鹿児島大学, 連合農学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 白麹菌 / クエン酸 / トランスポーター / RNA結合タンパク質 / リジン合成 / 焼酎 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は白麹菌におけるクエン酸高生産機構の解明を目的として行った。比較ゲノム解析により、クエン酸合成酵素遺伝子(citA)の周辺に保存された推定クエン酸-オキソグルタル酸交換輸送体遺伝子(yhmA)と推定RNA結合タンパク質遺伝子(nrdA)を見出した。これらがクエン酸高生産機構に関与すると推定し、解析を行った。 まず、yhmA破壊株および推定クエン酸-リンゴ酸交換輸送体遺伝子ctpAの破壊株を構築した。yhmA破壊株は野生株と比較して生育が遅延し、分生子形成能が低下した。一方、ctpA破壊株は分生子形成能が低下した。各破壊株のクエン酸生産量を測定したところ、yhmA破壊株は野生株の約30%、ctpA破壊株は約40%に低下した。次に、各GFP融合タンパク質の局在を観察した結果、いずれのタンパク質もミトコンドリアに局在することが示唆された。また、白麹菌を宿主として各Sタグ融合タンパク質を発現させ、タグ精製する系を構築した。精製タンパク質をリポソームに再構成し、14C標識クエン酸の輸送活性を測定した結果、クエン酸輸送活性を示した。さらに白麹菌において、yhmAとctpAの二重破壊株の構築を試みたが、取得できなかったため、Tet-Onシステムにより、ctpAを発現制御できる株を構築し、その後yhmAを破壊した。このTet-ctpA ΔyhmA株はctpAの発現非誘導時において、致死性を示した。致死の原因について、代謝物の観点から解析した結果、各破壊株の細胞内リジン濃度が有意に減少していることを見出した。そこで、Tet-ctpA ΔyhmA株を、リジンを添加した最小培地上で培養したところ、発現非誘導条件下においてもコロニーを形成した。以上の結果より、YhmAとCtpAは白麹菌におけるクエン酸輸送体であり、ミトコンドリアから細胞質へのクエン酸排出はリジン合成に関与することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
白麹菌を宿主としたクエン酸輸送体の精製系および、in vitroでの活性測定系の構築に成功し、また白麹菌におけるクエン酸輸送体の生理的役割について解明できたため、おおむね順調に進展しているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度はRNA結合タンパク質であるNrdAの機能解析を行う。これまでにnrdAのTet-Onシステムによるコンディショナル破壊株を構築し、白麹菌において、nrdAは必須遺伝子であることを明らかにしている。NrdAのクエン酸生産との関係性を明らかにするため、コンディショナル破壊株において、nrdAの発現を低下させた条件でのクエン酸生産性を調べる。また、この際の遺伝子発現挙動について、RNA-Seqにより、網羅的に解析する。次に、NrdAと相互作用するRNAを同定するため、RNA immunoprecipitationを行う。
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Research Products
(2 results)