2018 Fiscal Year Annual Research Report
白麹菌のクエン酸高生産機構の解明と有機酸発酵への応用
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17J02753
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
門岡 千尋 鹿児島大学, 連合農学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 白麹菌 / 焼酎 / クエン酸 / RNA結合タンパク質 / 二次代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は白麹菌のクエン酸高生産機構の解明を目的として行った。比較ゲノム解析により、クエン酸合成酵素遺伝子(citA)の周辺に保存された推定クエン酸-オキソグルタル酸交換輸送体遺伝子(yhmA)と推定RNA結合タンパク質遺伝子(nrdA)を見出した。これらがクエン酸高生産機構に関与すると推定し、解析を行った。 前年度までにクエン酸輸送体YhmAの機能を解明できたため、本年度はNrdAについての解析を行った。まず、白麹菌においてnrdA遺伝子破壊株の構築を試みたが、破壊株は取得できなかったため、Tet-Onシステムの制御下でnrdAの発現を制御できる株を構築した。このTet-nrdA株はnrdAの発現誘導時のみコロニーを形成したことから、nrdAは必須遺伝子であることが示唆された。また、nrdAの過剰発現により、生育や分化(分生子形成)、色素生産性に異常がみられた。次に菌体外クエン酸生産量を測定した結果、nrdAの過剰発現により野生株の約10%に低下した。NrdAと相互作用するRNAを同定するため、N末端側にSタグを付加したTet-S-nrdA株と抗Sタグ抗体を用いたRNA-immunoprecipitationを行った結果、NrdAと強く相互作用するRNAとして2872種を同定した。これら相互作用RNAのNrdA存在下・非存在下における遺伝子発現挙動について、RNA-Seqにより解析した。その結果、相互作用RNAはNrdA非存在下で発現量が上昇する傾向がみられたため、NrdAは相互作用するRNAの分解を促進する役割があることが示唆された。以上の結果より、NrdAはRNA分解制御をとおして、クエン酸生産や色素生産をグローバルに制御することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画どおり、白麹菌においてSタグを付加したNrdAと抗Sタグ抗体を用いたRNA-immunoprecipitationの実験系の構築に成功し、濃縮したRNA画分をRNA-Seqに供することで、NrdAと相互作用する可能性があるRNAを2872種同定した(分生子形成関連転写制御因子brlAやSAGA/ADAヒストンH3アセチルトランスフェラーゼgcnE、耐酸性α-アミラーゼasaAなどを含む)。また、NrdAの発現抑制条件において、これらの遺伝子の発現量が顕著に増加したことから、NrdAは相互作用RNAの分解を促進する機能があることが明らかとなった。さらに、白麹菌においてNrdAの過剰発現はクエン酸生産を抑制するだけでなく、分生子の形成や色素生産にも関与することが示唆された。NrdAに関する新たな知見が得られたため、おおむね順調に進展しているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度はモデル糸状菌Aspergillus nidulansを宿主として、NrdAと二次代謝の関連について明らかにする。前年度までに白麹菌だけでなく、A. nidulansにおいてもnrdAは必須遺伝子であることを明らかにしている。NrdA過剰発現株における既知の二次代謝物(ペニシリンやステリグマトシスチン、オルセリン酸)の生産量について、LC-MS/MSにより詳細に解析する。また、新規なピークが検出された場合は、NMRによりその化合物の構造を決定する。NrdA過剰発現による二次代謝物生産量の変化が確認され次第、黄麹菌やヒト病原菌Aspergillus fumigatusにおいてもNrdA過剰発現株を構築し、二次代謝物生産量の変化について解析する予定である。 また、A. nidulansは白麹菌と異なり有性世代をもつ糸状菌である。そこで、有性世代の生殖器官である子嚢殻の形成能やその成熟への影響についても解析する。さらに、NrdAの過剰発現による遺伝子発現変動についてRNA-Seqにより解析する予定である。
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Research Products
(5 results)