2017 Fiscal Year Annual Research Report
環境変化に応答したペプチドの人工制御とその機能に関する研究
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17J03086
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
古川 かほり 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(薬学系), 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | ペプチド / 非天然型アミノ酸 / 構造制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、ジ置換アミノ酸及びペプチドの合成、ペプチド二次構造解析を中心に研究を行った。環状ジ置換アミノ酸として側鎖に環状アセタール構造を有するアミノ酸Hms(ヒドロキシメチルセリン)(Ipr)、Hms(c-Hex)を用い、L-Leu(ロイシン)シークエンス中に導入したペプチドを設計した。 環状ジ置換アミノ酸はペプチド中でも低pH条件下で加水分解され、鎖状ジ置換アミノ酸Hms含有ペプチドを与えた。 合成したペプチドをFT-IR、CDスペクトル、NMRを用いて溶液中での構造解析を行い、X線構造解析にて結晶状態の構造解析を行った。環状ジ置換アミノ酸Hms(Ipr)含有オクタペプチドならびにHms(c-Hex)含有オクタペプチドの溶液中での二次構造解析より右巻きの310-ヘリックス構造を取っている事が示唆された。また、X線結晶構造解析により、Hms(Ipr)含有オクタペプチドは、右巻きのa-ヘリックス構造をとっていることが明らかになった。 一方で、鎖状ジ置換アミノ酸Hms含有オクタペプチドは溶液中において、ランダム構造を取っていることがCDスペクトルの結果から分かった。この理由として、アミノ酸側鎖構造の環状から鎖状への変化と極性の変化、さらに水素結合供与体の生成の3つの要素があると考える。以上より、アセタール構造を有する環状ジ置換アミノ酸をペプチドに導入することで、低pHに応答した二次構造の人工制御が可能であることを証明することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
独自に設計・合成した非天然型アミノ酸を利用し、ペプチドの人工制御を達成することができたことから、研究は順調に進行していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、アセタール構造を側鎖保護基に用いているが、ペプチド上での側鎖修飾ができなかったこと及び低pH感受性が低いことが課題として上げられ改善の余地があった。このような課題を改善するために側鎖保護としてボロンエステル構造をもちいた新規ペプチドの創製を行なった。 一般に、ボロン酸はジオール部位を有する化合物と可逆的なエステル形成により結合することが知られている。このような構造的特徴を生かし、微弱な酸や糖のようにジオール構造を有する化合物を認識して側鎖構造が変化するアミノ酸ならびにその含有ペプチドの創製を目的とした。ボロン酸エステル構造を側鎖に持つアミノ酸を含有したペプチドを合成し、二次構造が溶液中でヘリックス構造をとっていることが示唆された。合成したペプチドのpH感受性の検討および側鎖修飾について検討する予定である。また、得られたペプチド二次構造に関する知見を元に、膜透過性ペプチドへの応用を行なっていく予定である。
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