2017 Fiscal Year Annual Research Report
フレキシブル基板を利用した歪みによる磁気特性の制御とその応用
Project/Area Number |
17J03125
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
太田 進也 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
|
Keywords | 逆磁歪効果 / フレキシブル |
Outline of Annual Research Achievements |
フレキシブル基板上磁性薄膜の研究に関して応用と基礎両方において以下のような進展があった。 応用面では逆磁歪効果と巨大磁気抵抗効果を組み合わせたひずみセンサをフレキシブル基板上に作製し、動作実証を行った。逆磁歪効果は、ひずみを印加することで磁性体の特性が変化する現象であるが、フレキシブル基板上に作製された磁性薄膜は1%程度の巨大なひずみの印加が容易で、その結果磁化の向きが明確に変化する。これに非磁性層を挟む二つの磁性層の磁化の相対角度に電気抵抗が依存する巨大磁気抵抗効果を組み合わせることで電気抵抗がひずみに応答する素子となる。特に正の磁歪定数を持つCoと、磁歪定数が0に近いNiFe合金の層で薄いCu層を挟んだ試料に引張歪みを印加すると、Coの磁化は引張方向を向く一方でNiFe層には変化は生じない。このときの抵抗変化から印加された引張歪みの方向を検出できることを実証した。巨大磁気抵抗効果を用いることで既存の歪みセンサよりも大きなゲージ率が得られるだけでなく、方向という磁化が持つ情報を利用した質的に新奇なセンサが作製可能であることを示した。また、Coの磁歪定数は作製条件により正から負まで制御できることの発見など、フレキシブルなスピントロニクスデバイスを作製する上で重要な基礎データも付随して得られている。 基礎研究の面ではフェリ磁性TbFe合金などで、一軸引張ひずみによる補償温度の変化を観測した。また、それに伴い飽和磁化や保磁力が大きく変化することも確認した。引張ひずみにより磁性原子間の交換相互作用の大きさが変化した結果であると考えられる。従来の逆磁歪効果は磁気異方性の変化が中心に議論されていたが、フレキシブル基板を用いて大きな歪みを印加することで新奇な逆磁歪効果を観測したと考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
巨大磁気抵抗効果と逆磁歪効果を組み合わせたプロトタイプ素子が想定よりも早く実現し、最適な積層構造の探索や、詳細な特性評価を行うことができた。 当初計画では二軸歪み印加や、製膜時歪み印加によってキュリー温度や飽和磁化の変化を発見することを目指したが、狙い通りの結果は得られなかった。一方で一軸引張ではあるが、フェリ磁性体に注目することで補償温度や飽和磁化の変化がみられ、予想以上の結果が得られた。
|
Strategy for Future Research Activity |
ひずみセンサに関してはトンネル磁気抵抗効果や超磁歪材料を利用したゲージ率の更なる増加、反強磁性体交換バイアスの導入による無磁場動作・高感度化を直近の課題とする。将来的には集積化による歪み分布マッピングの実現に取り組む予定である。 フェリ磁性体の補償温度のひずみによる変化に関しては、サンプルによる結果のばらつきや経時変化の影響もあり、それらを極力排除した実験結果を得ることを目指す。また、元素選択的な測定を行うことでより詳細に補償温度変化のメカニズムについて考察していきたい。
|
Research Products
(2 results)