2018 Fiscal Year Annual Research Report
フレキシブル基板を利用した歪みによる磁気特性の制御とその応用
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17J03125
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
太田 進也 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 磁気弾性効果 / フレキシブル基板 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は目標としていたフェリ磁性体の補償温度の歪みによる制御と、フレキシブル基板上での磁気トンネル接合素子の作製に主に取り組んだ。 フェリ磁性体の補償温度の歪みによる制御に関しては、歪みによる補償温度の変化を既に観測していたので、X線磁気円二色性測定を用いて二種類の元素からなるフェリ磁性体の磁気モーメントの歪みによる変化を元素選択的に調べることでそのメカニズムを探ることを目指した。実際に放射光施設における実験で歪み印加前後で磁気モーメントが変化している様子を確認することに成功したが、限られた実験時間の中ではその変化が経時変化ではないことや、他の試料での再現性を確認するには至らなかった。また、その際得られた磁気モーメントの変化の符号が別の測定で得られた補償温度の変化の符号と整合性がとれない結果となり、経時変化や試料依存性についてより慎重に調べる必要があることが分かった。 一方でフレキシブル基板上への磁気トンネル接合素子の作製については、今までアニール処理を用いるため、素子の作製後にフレキシブル基板へ転写する方法のみ報告されていたが、本研究では耐熱フィルムを用いることで、従来の磁気トンネル接合素子と同様の方法で作製することに成功した。 また、上記のようなフレキシブル基板上の磁性薄膜において、X線吸収微細構造分光法を用いて磁性体に実際にどれほどの歪みが伝わっているか調べたところ、1%を超える基板の変形の2/3程度が磁性層に伝わっていることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
フェリ磁性体の補償温度の歪みによる制御については、少ない実験結果から実際に歪みによる変化が生じることが分かっていたが、更に実験を進めていったところ、試料依存性や経時変化のためか再現性が確認できないなどの問題で当初の計画通りに進めていない。 一方でフレキシブル基板上への磁気トンネル接合素子の作製については当初想定していたよりも早く作製条件が見つかった。同時に交換バイアスへの磁気弾性効果の調査も進んでおり、フレキシブル歪みセンサを高度化させるという面においては著しい進展が見られた。
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Strategy for Future Research Activity |
フレキシブル基板上へ磁気トンネル接合素子が作製できるようになってきたので、引張試験も行って歪みセンサとしての特性を調べていく。また、反強磁性体による交換バイアスの導入や、磁気弾性特性の制御などを用いて更に歪みセンサ特性を向上させていく。 また、本年度行ったX線吸収微細構造分光実験を更に進めることで、フレキシブル基板上逆磁歪効果を利用する上で重要である、どのような状況で磁性体に歪みが加わりやすいもしくは加わりにくいのか等について理解を深めたい。
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