2018 Fiscal Year Annual Research Report
現代メラネシアにおける「客体化」の相対化:ポスト紛争期ソロモン諸島の事例から
Project/Area Number |
17J03233
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
橋爪 太作 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | メラネシア / 文化人類学 / 慣習的土地権 / 開発 / 贈与交換 / 人格(person)論 |
Outline of Annual Research Achievements |
メラネシア(南太平洋)地域の植民地化の過程においては、賃労働や学校教育、キリスト教、さらに近年では独立後の国家制度やNGOなどの国際組織といった外来の要素が入り込み、人々の生活は大きく変化した。 1980年代以降のメラネシア人類学ではこうした社会変動を、新たな時代状況に直面した人々自身が、自らがその中に埋め込まれてきた文脈を相対化し客体として操作可能にしていく過程として理解してきた。一方でオセアニアの伝統的社会を対象とした贈与交換論においては、モノやサービスのやりとりが贈り手と受け手の間に関係を構築し、主体を作り上げていく作用が論じられてきた。 本研究の課題はこの対照的な2つの社会性の現実における連関であった。これに答えるために昨年度に引き続きソロモン諸島ガダルカナル島およびマライタ島で9カ月間の現地調査を行った。調査地は昨年度予備調査を行ったマライタ島西ファタレカ地域を中心とした。 調査の結果判明したことは以下の通りである。①かつて各氏族集団の土地は神聖不可侵なものとされ、血讐への謝礼など重要な契機に限り他者へ贈与された。②土地の力の源泉とされた祖霊信仰が廃れる一方で、木材伐採により土地は新たな経済的価値を持った。③前述の経緯により現在の土地境界は集団・個人間の過去の因縁を記録する媒体となっているため、所有者をめぐる解釈の相違が生じた際に自己と他者双方への疑心暗鬼を生み、争いが容易に沈静化しない。④土地を媒介とした祖先との関係が木材伐採によって継続している一方で、その収入を新たな事業へ投資し都市で新たな生活を始める人々、あるいは農業や観光など異なる開発のあり方に希望を繋ぐ人々が存在する。 このように離床と埋め込みは背反するものではなく、むしろ相互に包摂し合うと考えられる。今後こうした知見をファタレカ社会における遠心性と求心性の関係全般にまで広げて調査・考察を進めていく予定である。
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Research Progress Status |
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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