2017 Fiscal Year Annual Research Report
イソギンチャク類の系統分類学的研究―その祖先形と形態の進化を証明する―
Project/Area Number |
17J03267
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
泉 貴人 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | Anenthemonae亜目 / ムシモドキギンチャク科 / カワリギンチャク類 / 分子系統解析 / 新種記載 / 再記載 / フィールドワーク / パラフィン切片 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本全国(平成29年度は、四国、鳥羽、奄美、下田、トカラ列島・佐世保、瀬戸内海、三崎)に赴いて、干潟の掘削・潜水・乗船による底引き等のフィールドワークを行い、イソギンチャク類を採集した。 また、既に採集されたイソギンチャクを水族館(平成29年度は、九十九島水族館・鳥羽水族館・竹島水族館)から拝受し、標本化した。更に、千葉県立中央博物館分館海の博物館所蔵や個人所有の標本を拝借・拝受し、さらに研究室の航海調査により採集された刺胞動物類の標本も漏れなく収集した。 研究室で、解剖による外部形態の分析、ミクロトームによる薄切、微分干渉顕微鏡を用いた刺胞の観察などを行った。形態形質を調べて種を同定した(平成29年度は、主にカワリギンチャク類と、コンボウイソギンチャク類を同定し、ムシモドキギンチャク類に関しては一部のみを同定した)。 収集した標本からDNAを抽出し、PCR及びシーケンシングを行い、塩基配列のデータを解読・蓄積した。平成29年度は、イソギンチャク類に合致するプライマーのセットを見つける試行錯誤に時間を要したため、ミトコンドリア12S・16S rDNA・COXIIIDNA、核の18S・28S rDNAの情報をを塩基配列データの入手に留まった。 修士課程及び博士課程1年で明らかにした日本産のムシモドキギンチャク・カワリギンチャクおよび無足盤族類の記載を行い、英文原著論文にて投稿した。平成29年度は、3本の論文が受理され、そのうち1本の論文が出版された。さらに、現在2本の論文を投稿している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の進捗に関しては、平均すると概ね予定通りであるが、個々の項目では予定以上の進捗の部分と予定より遅れている部分がある。 サンプルの採集に関しては、フィールドワークを予定通りの回数こなすことが出来、予期していた程度の標本が集まった。標本収集に関しても、2年度目に必要な標本は殆ど集まっている。 標本の形態分析に関しては、切片作成に関しては殆どの標本で終わらせている。しかし、当方の研究所のミクロトーム(切片作成機械)があまりに古く、性能が悪すぎたため、切片の出来が宜しくない状態である。よって、来年度も切片作成作業に時間を割かなければならない。また、刺胞の検鏡に関してはまだ、数をこなさねばならない状態にある。種の同定に関しては、概ね予定通りの進捗である。 分子系統解析に関しては、イソギンチャク類に合致するプライマーセットを発見する試行錯誤にかなりの時間を取られてしまった。そのため、系統解析(配列決定・系統樹構築等)を行う時間がなく、来年度に持ち越しとなってしまった。 学会発表に関しては予定していたものに加えて動物学会の大会を加えた3回をこなし、また小規模なシンポジウムや講演会にも演者として登壇した。さらに、論文は目標としていた3本の受理を達成して、更に2本の投稿を行うことが出来た。上述の試行錯誤のため分子系統解析を絡めた論文は投稿できなかったが、業績に関しては概ね予定通りと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度に採集した標本のうち、未処理の標本の処理作業を同様に行い形態形質のデータを入手する(特に、ミクロトームの不調で状態の悪い切片に関しては、平成30年度より導入する新たなミクロトームを利用して切片を作り直す)。 それらの標本を利用し、属・種を同定する。特に、ムシモドキギンチャク類の同定は遅れているので、刺胞の検鏡も併せて精力的に行う。 更に、分子系統解析に関しては、昨年度の末に取得したシーケンスの情報を処理し、系統樹を構築する。その系統樹を分析し、イソギンチャク類の進化についての知見を得る予定である。また、適宜試薬を追加して分子実験を遂行し、塩基配列のデータを追加で収集・蓄積することで、より詳細な系統樹を構築する。 必要があれば、タクソンサンプリングの充実を目指して小規模な採集を継続し、また博物館での標本調査も引き続き行っていく。 それらのデータから、本年度は分類学的な研究の成果に加え、2年間に解析したイソギンチャク類の系統に基づく分類体系の再編とイソギンチャク類の形態の進化を考察する論文も執筆し、投稿する予定であり、また博士課程の学位論文を執筆できる予定である。さらに、標本は国立科学博物館・千葉県立中央博物館分館海の博物館に登録する。
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Research Products
(5 results)