2017 Fiscal Year Annual Research Report
Real Effects of Accounting Information
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17J03278
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
藤谷 涼佑 一橋大学, 大学院商学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 設備投資 / 会計情報の質 / コーポレートガバナンス |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度に実施した研究は、次の2つである。 研究1:The Real effects of accounting earnings attributes: evidence from Japan。 研究2:Is the quality of accounting information complementary or substitute for other governance mechanisms? 研究1は、企業が報告する財務諸表の情報の質を代理する利益の質と、企業の投資行動の効率性との関係を検証した研究である。先行研究では、日本では利益の質が投資行動に影響を与えないことが報告されていたが、本研究は質の高い利益を報告している企業では投資の質が改善されることを発見した。先行研究は、日本では銀行を通じた資金調達やモニタリングが中心であることから、財務報告の重要性が低いと議論している。しかし、本研究の証拠は、この先行研究の議論が現在では成立しない可能性があることを示唆している。 研究2は、財務報告以外のガバナンスメカニズムと、研究1で観察した会計利益の質の企業の投資行動への影響との関係を分析する研究である。銀行によるモニタリングによって財務報告の重要性が低くなるという研究と、銀行との関係の強さが財務報告の影響を強化するという先行研究が存在し、決定的な結論が出ていない。そこで、銀行が経済的に重要な役割を果たしていると理解されてきた日本に着目し、いずれの関係が観察されるかを検証した。検証の結果、銀行との関係が強いほど会計情報の効果が強くなることが明らかになった。 こうした一連の研究について、平成29年度は国内学会で2回、国際学会で5回、研究報告を行った。いずれも英語での発表であり、様々なバックグラウンドをもつ研究者から有益なコメントを頂いた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度には、「研究実績の概要」に示したような研究を遂行し、予定通りの進捗で研究を進めることができた。特に、一連の研究について、平成29年度は国内学会で2回、国際学会で5回、研究報告をいずれも英語で行い、様々なバックグラウンドをもつ研究者から有益なコメントを頂いた。またこのコメントを受けて、ブラッシュアップすべき部分を明確にできたため、予定通り雑誌への掲載に向けて修正を続ける。 これに加えて、平成30年度の研究成果につながる論文に関係するデータセットの構築や、簡便的な分析を既に完了しており、こちらの進捗についても予定通りであると考えられる。以上の2点を踏まえて、平成29年度における研究の進捗状況を「期待通り研究が進展した」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
学会でいただいたコメントでは特に、いずれの研究でも利用している、投資の効率性の指標の頑健性に対して十分に確認する必要がある点を指摘された。これらの研究で想定している「投資の効率性」という概念と、実際に測定されている投資の効率性の指標との間に十分な整合性があるかを確認する必要があると考えられる。これに加えて、会計情報の質と企業の投資の意思決定との間に因果関係があることまで検証できているかを慎重に検討する必要がある。両者の間には、①仮説通り前者から後者への効果がある可能性、②後者から前者への逆因果の可能性、③両者が企業のファンダメンタルズ等によって同時決定する可能性、がある。②や③の可能性を棄却できなければ、①と整合する結果が得られたと結論づけるのは難しい。この問題に対しては現在のデータセットでは部分的にしか対応できないが、リサーチデザインを改善することで対応することにする。このように研究1は様々な学会で受けたコメントを元にブラッシュアップし、現在査読付雑誌に投稿予定である。 平成30年度には、研究1および研究2の査読付き雑誌への掲載を目指す。これらの研究と並行して、上記で観察された現象の因果関係を厳密に検証するセッティングを利用した研究を進める。いずれの研究についても国内外の研究者から幅広くコメントを頂きながら研究活動に邁進する所存である。
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