2017 Fiscal Year Annual Research Report
Regulatory mechanism of transcriptional regulator involved in the production of branched-chain amino acids in acetic acid bacteria
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17J03300
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
石井 友理 関西学院大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 酢酸菌 / 転写因子 / 転写制御 / トランスクリプトーム解析 / Lrp / 細胞内pH |
Outline of Annual Research Achievements |
酢酸菌のエタノール酸化により生じた酢酸は、細胞外pHの低下を招く。また、酢酸菌Komagataeibacter europaeusの細胞内pHは、対数期から定常期にかけて6から5程度にまで低下する。この特徴は、転写因子の標的DNAに対する親和性にも影響を与えると考えられる。これまでに、K. europaeus由来の転写因子Leucine-responsive regulatory protein(KeLrp)のアミノ酸代謝における役割を検討してきたが、本因子のアミノ酸代謝系以外の標的遺伝子の特徴や制御機構は不明な点が多い。 本年度は、1.KeLrp標的遺伝子の網羅的同定のため、野生株及びKeLrp完全欠損株のトランスクリプトーム解析を実施した。完全欠損株において、グルコース取り込み系、中枢代謝、および呼吸鎖等に関わる遺伝子群における発現変動が見られた。2.両株における細胞外グルコースの変動と膜結合型脱水素酵素群の活性を比較したところ、野生株ではグルコースを定常期以降に消費するのに対し、完全欠損株では対数期から徐々に消費しており、膜結合型脱水素酵素活性が完全欠損株では野生株と比較して減少していた。本菌は炭素源としてエタノール、酢酸、グルコン酸の順に利用する。これらから、完全欠損株におけるグルコース消費の早期化は、グルコース取り込み能の強化および呼吸鎖の停滞により、酢酸産生量が低下したことに起因すると考えられる。3.KeLrp制御機構の解明に向け、in vitroにおける検証を進めた。異なるpH条件における標的DNAとの結合性を大腸菌及びK. europaeus由来のLrp(EcLrp及びKeLrp)で比較すると、pH8.0の結合条件ではEcLrpがKeLrpよりも結合親和性が高かったのに対し、pH6.0未満ではKeLrpにおける結合親和性は高まり、EcLrpでは低下することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度中に、KeLrp標的遺伝子の網羅的同定並びに本因子の標的DNAとの結合性の性質(特に異なるpHにおける結合性)の一端を明らかにすることができたことから、当該研究はおおむね予想通りに進行していると考えられる。本研究では、はじめに野生株及びKeLrp完全欠損株由来のmRNAを用いてトランスクリプトーム解析を実施した。その結果、完全欠損株において、野生株と比較しグルコース取り込み系及び呼吸鎖等に関わる遺伝子群における発現変動が確認された。この現象を受け、次に両株における細胞外グルコースの変動と膜結合型脱水素酵素群の活性を比較したところ、野生株ではグルコースを定常期以降に消費するが、完全欠損株では対数期から徐々に消費しており、膜結合型脱水素酵素(ADH及びALDH)活性が完全欠損株では野生株と比較して減少していることが示された。また、KeLrp制御機構の解明に向けた、in vitroにおける検証においては、異なるpH条件で標的DNAとの結合性を大腸菌及びK. europaeus由来のLrp(EcLrp及びKeLrp)で比較したところ、結合親和性の特徴に差異が見られた。現在、各Lrpの結合性の特性をより精密に検証するとともに、KeLrpのC末端側(リガンド結合および多量体形成に重要と推定される領域)の役割を明確化するため、C末端側部分欠損株のトランスクリプトーム解析並びに欠損型のタンパク質の取得を試みている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、網羅的解析においては、KeLrp完全欠損株に加え、KeLrpのC末端側(リガンド結合および多量体形成に重要と推定される領域)部分欠損株についても発現動態をトランスクリプトーム解析(mRNA-seq法)により追跡し、完全欠損株と部分欠損株との差異を明確化させる。また、これらの研究成果における論文執筆を進めていきたい。次に、in vitroでのKeLrp制御機構の解明においては、1.精製タンパク質を用いたKeLrpの等電点の検証、2.異なるpH条件におけるEcLrpとKeLrpの標的DNAとの結合性の精査、3.KeLrpについて最適なpH条件にて本因子の制御領域の絞り込み、及び4.リガンド分子候補存在下での結合状態の変動を詳細に検討していく。また5.各LrpのpH変化に伴う構造変化を円偏光二色性により評価する。これらから、各Lrpにおける結合特性・安定性の相関を考察していきたい。さらに、野生型KeLrpに加え、C末端領域を欠損した部分欠損型KeLrpについても精製タンパク質の取得を目指し、両者の制御様式の違いを明らかにしていきたい。in vivoにおける検証においては、現在、網羅的探索により絞り込んだ、複数のKeLrp標的遺伝子の推定プロモーター領域をレポーター遺伝子(lacZ)の直上に連結し、K. europaeus細胞内で複製可能な改変プラスミドと連結した複数種のプラスミド構築が完了している。そのため、今後はこれらプラスミドを野生株・KeLrp完全欠損株・部分欠損株に導入し、レポーター遺伝子の酵素活性を指標とした、生体内における標的遺伝子の発現制御に必要な領域の絞り込みを行う。これら一連の検証により、KeLrpの制御機構の全容解明を目指す。
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Research Products
(9 results)