2017 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17J03308
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小川 真治 東京大学, 大学院理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 素粒子実験 / ミュー粒子 / 超対称性 / ガンマ線検出器 / 液体キセノン / 半導体光検出器MPPC |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は液体キセノンガンマ線検出器の立ち上げ・運用を行い、その性能を最大限取り出すことにより、世界最高感度でのμ→eγ崩壊の探索を目指すものである。平成29年度上半期に、検出器の立ち上げを実施したのち、年末にμ粒子ビームを用いた試運転を実施した。 本年度5月より液体キセノンを検出器容器内に安定に保持し、高純度を保つための制御系の立ち上げ・調整を行った。液体キセノンからの発光量を監視しながら、液体キセノンの純化を行い、数ヶ月の純化ののち十分な光量に到達したことを確認した。8月には較正用LED及びアルファ線源を使用して、全ての光センサーの性能(増幅率及び光子検出効率)を測定した。ノイズにより測定できなかったものを除けば、ほとんどの素子で検出器運用に十分な性能が確認された。 これらの立ち上げ作業の後、12月にはμ粒子ビームを用いた試運転を実施し、物理データと同じく50MeV程度のγ線を測定した。ビームテストの期間中光センサー及び検出器の性能をモニターし続けることにより、検出器の安定した運用を実現した。本ビームテストのデータを用いて時間分解能を評価した。新たなノイズ削減手法の開発など、解析の最適化を行い、その結果44 psという十分良い分解能を得た。 本ビームテストにおいて、読み出された信号にコヒーレントなノイズが存在しており、これがγ線のエネルギー分解能に影響を与えることが判明した。読み出し回路を担当しているスイスのグループと協議の上、対処法を検討中である。 これらと並行して、較正用γ線タイミングカウンターの研究開発及び試作機の開発を行った。これは来年度に実施する検出器較正に用いるものであり、高速プラスチックシンチレータとMPPCを用いた検出器である。今年度は試作機を作成し、30 psという十分な性能を確認した。来年度の運用開始に向けて今後実機製作を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
液体キセノンガンマ線検出器の立ち上げを行い、その安定した運用に向けて高純度な液体キセノンの保持・全光センサーの較正・ガンマ線データの取得などを計画通り実現できた。エネルギー分解能に影響を与えるような大きなノイズが見つかるという予期せぬ問題もあったが、時間分解能に関しては想定よりも良い値が得られており、全体としてみれば順調に進んでいると考えられる。並行して進めている較正用γ線タイミングカウンターの開発に関しても、試作機において十分な性能を確認できており、来年度の運用開始に向けて順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は加速器を用いた単色ガンマ線源による検出器性能の測定を行う予定である。特に11月に中性π粒子崩壊由来の55MeVのγ線を用いて検出器の各分解能を測定する計画であり、これに向けて光センサー較正手法の改善・ガンマ線再構成手法の改善・較正用γ線タイミングカウンターの実機製作及び試験などを進める。また、本年度発見されたノイズ問題への対処も、回路を担当しているグループと協議の上行う予定である。
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