2017 Fiscal Year Annual Research Report
アスリートにおける運動誘発性食欲減退の実態およびその打開策の検証
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17J03432
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
小島 千尋 立命館大学, スポーツ健康科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 運動誘発性食欲減退 / アスリート / 食欲調節ホルモン / 筋グリコーゲン量 / クライオセラピー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的はアスリートにおける運動誘発性食欲減退が引き起こす負の影響を明らかにし、その打開策を検証することである。アスリートにおいて運動後の栄養摂取は重要であるため、運動誘発性食欲減退はネガティブな影響をもたらす可能性がある。これまで、アスリートにおける運動誘発性食欲減退が筋エネルギー基質や運動パフォーマンスに及ぼす具体的な影響は明らかにされていない。さらには、この運動誘発性食欲減退を早期に回復させる方法はこれまで十分に着目されてこなかった。本研究はアスリートにおける運動後の栄養摂取戦略において新たな視点を提示すると期待できる。 平成29年度は、トレーニング期間中における食事摂取量の減少が運動パフォーマンスおよび筋グリコーゲン量に及ぼす影響を検討した。その結果、3日間の持久性トレーニング期間中の食事摂取量の減少により、筋グリコーゲン量の有意な低下が認められた。また、同化作用を有する血中テストステロンおよびインスリン様成長因子1(IGF-1)濃度が低下した。一方で、4日目に測定した運動継続時間は変化しなかった。このことから、トレーニング期間中における食事摂取量の減少は筋グリコーゲン量を低下させることが明らかになった。また、この状態が継続されることで、運動パフォーマンスの低下を招くことが示唆された。さらには、一過性運動後の食欲減退を回復させる方法を明らかにするため、運動後の身体の冷却 (WBC)が食事摂取量の回復に有効か否かを明らかにした。その結果、運動後にWBCに3分間暴露することで、運動後に何もせずに安静を維持する場合と比較してビュッフェ形式により評価した食事摂取量が有意に高値を示した。一方で、食欲調節ホルモン(グレリン、PYY、レプチン)の変化の動態には条件間における有意な変化はみられなかった。このことから運動後のWBCは食事摂取量を増加させることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は「高強度運動後の身体の冷却が食欲調節に及ぼす影響」と「トレーニング期間中における食事摂取量の減少が筋グリコーゲン量、筋損傷、その他内分泌応答、運動パフォーマンスに及ぼす影響」の2つの実験を実施した。実験を2つ実施することは、当初の予定通りの計画である。また、いずれの研究においても、新規性の高い結果を得ることができた。現在は、いずれの実験におけるデータ解析も終了しており、投稿論文の執筆を進めている。したがって、研究の進捗状況は順調であると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は前年度に実施した実験を2編の原著論文にまとめ、主要国際誌に投稿・掲載していく計画である。 また、新たに実験を1つ実施する予定である。平成30年度は、「運動によるネガティブエネルギーバランスが、運動中の糖利用動態に及ぼす影響」を検討する。本研究では、安定同位体標識グルコースを用いて、糖の利用動態を検討する点が特徴である。本手技については、前年度実施した実験においてその手技や評価方法を確立しており、支障なく新しい実験に導入できる。また、当初の予定にはなかった筋グリコーゲン量の測定も追加し、運動によるネガティブエネルギーバランスによる糖代謝の動態をより詳細に検討していく予定である。
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