2017 Fiscal Year Annual Research Report
地上観測データに基づく広域的な森林メタン収支推定モデルの開発
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17J03478
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
坂部 綾香 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2021-03-31
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Keywords | メタンフラックス / チャンバー法 / 熱帯泥炭湿地林 / 微気象学的手法 / シロアリ |
Outline of Annual Research Achievements |
地上観測データに基づく広域的な森林メタン収支推定モデルの開発に向けて、地上観測データの不足が課題であるので、様々なタイプの森林において、微気象学的手法による森林生態系スケールのメタン交換量の観測、チャンバー法によるメタン収支に寄与すると思われる林内のコンパートメントごとのメタン交換量の観測を行った。 熱帯泥炭湿地林では、とりわけメタン交換量の観測データが不足しており、森林生態系スケールのメタン交換量の観測データはほぼ存在しない。そのため、インドネシア中カリマンタンに位置する熱帯泥炭湿地林において、微気象学的手法である渦相関法によるメタン交換量の観測を開始した。乾季と雨季を含む期間のメタン交換量の観測データを取得し、その変動幅、季節変化の様子を初めて明らかにした。 また、滋賀県南部に位置する温帯ヒノキ林では、微気象学的手法による森林生態系スケールのメタン交換量の観測、チャンバー法による土壌メタン交換量の観測を継続して行い、長期データの蓄積を行った。本試験地では、新たに樹木を介したメタン放出が確認されたので、その生態系スケールのメタン交換量への影響を評価するために、幹にチャンバーを設置し、連続観測を開始した。樹木を介したメタン放出量の定量化、土壌環境の観測を併せて実施することで、変動メカニズムの解明に取り組んだ。 また、マレーシアに位置する熱帯雨林において、シロアリによるメタン放出の寄与を明らかにするために、チャンバー法によるシロアリの巣からのメタン交換量の観測を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究実施計画では、初年度は複数の野外サイトでメタン交換量観測システムの立ち上げ、データの取得を行う予定であったが、妊娠により体調が優れず、当初の計画の通りに野外観測を進めることができなかった。一方で、取得データの解析、論文の執筆については、熱帯泥炭湿地林におけるメタン交換量の観測結果を論文にまとめ、投稿することができたので(現在査読中)、当初の予定より進めることができた。そのため、全体としては、現在の進捗状況はやや遅れていると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
まだ不足している野外観測データの蓄積を継続して行う。 また、機械学習モデルSVR法の解析方法を習得する。そして、申請者自身、共同研究者によって、複数の森林における生態系スケールのメタン交換量の観測データ、気象データ、土壌環境データが得られているので、それらのデータを機械学習モデルに入力し、生態系スケールのメタン交換量を推定するためのモデルのパラメータを決定する。観測値を真値として、あるパラメータを除去した場合の観測値との誤差を判断基準として、パラメータの決定を行う。また、人工衛星リモートセンシングデータの取り扱いを習得し、モデルを広域実行する際の入力データを整備する。全球気象データ、土壌物理情報のデータベースから、データをダウンロードする。各データは、異なる時間・空間分解能を持っているので、平均化して、共通の時間・空間分解能を持つデータセットを整備する。
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