2017 Fiscal Year Annual Research Report
グローバルバリューチェーンを通じたCO2とPM2.5の複合的発生経路の解明
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17J03544
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
永島 史弥 九州大学, 経済学府, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 大気汚染 / 家計消費 / 産業連関分析 / 構造分解分析 / 不確実性分析 / 多地域間産業連関表 |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年度は、アジアで深刻な問題となっている家計消費由来の大気汚染物質の排出に着目し、地域によって異なる家計の消費構造や所得分配構造が、家計消費に伴う大気汚染物質の排出にどのような影響を与えているのかを詳細に分析を行い、これからの家計消費排出の削減に向けた政策の在り方について議論を行った。本研究において家計消費・所得分配をレオンチェフの投入産出体系の中で内生化した宮沢モデルを多地域産業連関分析に適用するフレームワークを開発し、中国の30地域30部門の多地域産業連関を用いた実証分析を行った。本研究ではさらに消費、生産、分配のサイクルの中で特に排出に大きく寄与している構造経路(Critical Structural Paths)の抽出を世界で初めて行い、優先的に削減政策をとるべきステークホルダー(ここでは家計に加えて地域や企業など)の特定を行った。本研究成果は、環境経済学の査読付き国際誌であるEnergy Economics誌(Elsevier)に掲載された。 また、産業連関分析に基づいた構造分解分析(SDA)の結果の不安定性に関する研究を行った。分析に用いられる産業連関データは数多くの不確実性を含んでおり、SDAの結果はそれらの影響を受ける。SDAは経年変化の要因を捉えるが、その符号は分析結果の中で大きな意味を持つ。本研究では、日本の産業連関表をケーススタディとして用いて、モンテカルロシミュレーションを行いその符号逆転問題について議論した。この研究を通して構造分解分析を行う際の不確実性分析を行う重要性を示すことができた。本研究もEnergy Economics誌(Elsevier)にて受理された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
アジアの大気汚染に大きく寄与する家計からの排出について分析するために、中国国内の地域別所得分配構造や消費構造を産業連関システムに導入する新たなフレームワークを開発することができただけでなく、これまで議論されなかった産業連関データのエラーがもたらす構造分解の分析結果への影響についても深く分析することができた。また、本年度だけで2本の英語論文を掲載することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、これまでは分析対象外であった大気汚染物質の2次粒子を考慮したソースリセプタ関係(大気汚染物質の発生源と受容地域の関係)のデータを整備し、より詳細にアジア地域の大気汚染物質排出量とそれに伴う健康被害を削減するための支援策を検討する本研究成果は、国内外の学会において積極的に公表していく予定である。
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Research Products
(5 results)