2017 Fiscal Year Annual Research Report
メラノサイト-ケラチノサイト間のメラノソーム受け渡し機構の解明
Project/Area Number |
17J03558
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
丸橋 総史郎 東北大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | ケラチノサイト / メラノサイト / Rab |
Outline of Annual Research Achievements |
私たちの皮膚に存在するメラノサイトはメラニン色素の合成に特化した細胞であり、メラノソームと呼ばれる黒色の特殊な細胞小器官を産生している。産生されたメラノソームはメラノサイト内を輸送され、デンドライトと呼ばれる突起状構造を介して、接触している周辺のケラチノサイトへと受け渡される。このメラノソームの受け渡しは肌の暗色化を引き起こすだけでなく、紫外線を吸収することで細胞核へのダメージを防ぐ重要な働きをしている。したがって、メラノソームの合成から受け渡しまでの一連の過程の分子機構の解明は、白皮症の治療や皮膚ガンの予防など医学的見地からも重要であると考えられる。これまでの研究において、メラノサイト内で起こる合成および輸送においては、その関連分子が数多く報告されており、多くの分子機構が明らかになっている。しかしながら、最後の受け渡しのステップに関しては関連分子がほとんど報告されておらず、その分子機構に関しては全くの謎と言っても過言ではない。これらの背景を踏まえて、申請者はこのメラノサイト-ケラチノサイト間のメラノソーム受け渡し機構の解明にチャレンジしたいと考え、本研究の着想に至った。 受け渡し機構解明の足がかりとして、申請者は低分子量Gタンパク質であるRabに着目した。Rabは哺乳類に約60種類と多くの異なるアイソフォームが存在し、それぞれが特異的な小胞輸送を制御している。ケラチノサイトへのメラノソーム受け渡しの際には、メラノソーム膜、メラノサイトの細胞膜、及びケラチノサイトの細胞膜において、膜構造の変化が予想され、何らかのRabが関与していると可能性が極めて高い。そこで本研究では、メラノサイトにおけるRabの網羅的なノックダウンスクリーニングを行い、受け渡し機構に関与するRabの同定を試みる。さらに、同定したRabを糸口として、受け渡し機構の詳細な分子機構の解明に挑戦する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究ではまず、マウス培養メラノサイト(melan-a細胞)とマウス培養ケラチノサイト(XB2細胞)を用いて、メラノソームの受け渡しが起こるメラノサイト-ケラチノサイトの共培養系の確立に着手した。その結果、最適な培養条件(培養液・細胞数)を見出し、この系においてメラノソームの受け渡しが起こることを確認することができた。 次に、メラノサイトにおいてsiRNAを用いたRabのノックダウンを行い、上記共培養系におけるメラノソーム受け渡し量の定量を行った。しかしながら、このスクリーニング系においては、siRNAのトランスフェクションによるダメージによりメラノサイト死細胞由来のメラノソームが一定数発生してしまい、正常なメラノソーム受け渡しの評価をすることが困難であった。 そこで、より簡易的な系を模索し、まずは共培養系ではなく単一培養系におけるメラノソームの放出を検出することにした。具体的には、マウスメラノーマ(B16細胞)において、RabのsiRNAを用いたRabのノックダウンを行い、一定時間メラノソームを放出させたのち、放出されなかったメラノソーム量を定量した。このスクリーニングの結果、候補Rabとして15種類のRabに絞り込むことに成功した。現在は、二次スクリー二ングとして、一次スクリーニングにおけるsiRNAのオフターゲット効果を除くため、15種類の候補Rabに対するshRNAをそれぞれ2つずつ作成し、同様の実験系においてさらなる絞り込みを行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在行っている二次スクリーニングを進め、メラノサイトの放出に関与する候補Rabを確定する。確定した候補Rabに対して、実際にケラチノサイトへの受け渡しに影響があるかを確認するため、メラノサイト-ケラチノサイト共培養系を用いた実験を行う。上記スクリーニングの際には、siRNAのトランスフェクションによるダメージが問題となったため、この問題を解決するべく、CRISPR-Cas9を用いたノックダウン株の作成を行う。これにより、細胞生存性の評価を正しく行い、正確に受け渡しへの関与を評価する。 受け渡しへの関与が明らかとなった暁には、その分子機構の解明を試みる。具体的には、候補Rabをbaitに用いたpull-down法や酵母two-hybrid法によりこれら結合分子の探索を行う。そして、結合分子の機能や構造、細胞内局在などを明らかにすることで、メラノソーム受け渡し機構の詳細な分子機構を解明する。 また、メラノソーム受け渡しのライブイメージングも同時に進める。メラノソームの受け渡しの際には、メラノサイト・ケラチノサイトの細胞膜、及びメラノソーム膜にダイナミックな変化が起こると予想される。そこで、それぞれの膜を別々の蛍光ダグで可視化し(CAAX配列→細胞膜;Tyrosinase→メラノソーム膜)、ライブイメージングを用いてこの変化を観察する。さらに、上記スクリーニングで同定したRab及びその複合体がどう関わっているのかを解析する。
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