2017 Fiscal Year Annual Research Report
持久性運動時のコンプレッションウェア着用による抗疲労効果およびその機序の解明
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17J03570
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
水野 沙洸 立命館大学, スポーツ健康科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | スポーツ科学 / 運動誘発性筋損傷 / 炎症反応 / リカバリー / コンプレッションウェア / 筋疲労 / 疲労回復 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の最終目的は、疲労軽減および疲労の早期回復に有効なコンプレッションウェア(CG)着用の条件およびその機序を明確にすることである。本年度(平成29年度)の目的は、運動中のCG着用が組織の振動および筋機能、筋損傷、炎症反応に及ぼす影響について検討し、CG着用に伴う疲労軽減の効果が得られる機序を明らかにすることであった。 活動的な男性10名を対象に、①運動中に大腿・下腿部に15mmHgの着圧が課されたCGを着用する条件(CG条件)、②運動中に大腿・下腿部に5mmHg以下の着圧が課された通常のタイツを着用する条件(CON条件)の2条件を異なる日に実施した。運動には、最大酸素摂取量の60%に相当する運動強度での2時間の上り勾配のランニングを用いた。運動中には、3軸加速度センサを大腿部および下腿部の4箇所(外側広筋、大腿二頭筋、脛骨、腓腹筋)に貼付し組織の振動を定量すると共に、心拍数、主観的運動強度、エネルギー代謝を検討した。また、運動前から運動終了3時間後にわたり、最大筋力や血液指標(筋損傷・炎症反応の指標)の経時変化を検討した。その結果、運動中における組織の振動および心拍数は、CG条件がCON条件と比較して有意に低値を示した。下肢筋群における最大筋力は、いずれの条件においても運動終了直後に有意に低下した一方で、運動終了3時間後における値は、CG条件がCON条件と比較して有意に高値を示した。また、血漿IL-6(炎症性サイトカイン)およびIL-10、IL-1ra(抗炎症性サイトカイン)濃度の濃度曲線下面積は、CG着用条件がCG非着用条件と比較して低値を示した。上述の結果は、長時間ランニング中におけるCG着用は、運動に伴う疲労を軽減すること、運動後における筋機能の回復を促進させることを示しており、これらの効果には着圧に伴う組織の振動の抑制が関与することを示唆するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は、運動中のCG着用に伴い抗疲労効果が得られる機序を解明するための実験に着手した。結果として、長時間のランニング運動中にCGを着用することで、運動中の下腿部の組織の振動が抑制され、それに伴い運動に伴う疲労が軽減すること、運動後における筋機能の回復が促進されることを明らかにした。これらの結果は、運動中のCG着用に伴う抗疲労効果の機序を考える上で、重要な知見となりうる。また、これまでの研究成果は国内外の学会で研究発表したことに加えて、原著論文として国際誌(PLoS ONE・Frontiers in Physiology)に掲載された。以上の諸点から、平成29年度の研究進捗はおおむね順調であったと評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度の研究により、運動中のCG着用に伴い抗疲労効果が得られる機序を捉えることができた。平成30年度以降は、着圧に伴う循環・代謝動態へ着目し、そのほかの機序の解明に繋げていく。また、国際誌への投稿のための論文執筆も引き続き進める。
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Research Products
(10 results)