2017 Fiscal Year Annual Research Report
Quantitative estimation of dose enhancement caused by radiation sensitizer gold nanoparticle
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17J03616
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
権 池勲 北海道大学, 医学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | ナノ粒子 / 放射線増感剤 / モンテカルロシミュレーション / 血管破壊剤 / 放射線治療 / 線量増加 / 光電効果 / 医学物理(学) |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度では、モンテカルロシミュレーションによって金ナノ粒子が及ぼす放射線量の増加効果の推定を行った。 放射線増感剤として研究されている金ナノ粒子は、細胞内ではクラスターを形成して分布することが実験的に確認されている。しかし、金ナノ粒子が及ぼす放射線量の増加を推定した先行研究の多くは、このクラスター形成による影響を考慮してこなかった。そこで、既に報告されている金ナノ粒子クラスターの実測パラメータを用いて、クラスターをシミュレーション上で再現することで、クラスター形成が線量増加に及ぼす影響の推定を試みた。その結果、クラスター形成を考慮しないシミュレーションでは、実際の線量増加を過大評価しており、特に等重量濃度下では小さい金ナノ粒子ほど過大評価されるおそれがあることを明らかにした。 一方で最新の研究では、金ナノ粒子を血管破壊剤として用いることで、放射線増感剤よりも高い効果が得られるという報告があることに着目し、当研究領域で最先端である米国ハーバード大学医学部にて共同研究を開始した。まず血管破壊効果を推定するにあたり、様々なパラメータ(金ナノ粒子の濃度、サイズ、空間分布、X線照射方向、薬剤注入後経過時間等)が血管への放射線量の増加効果にどのように影響するかを計算した。その結果、特に(1) X線の血管への入射方向が血管破壊効果の空間的な分布に影響を及ぼし、入射方向の違いにより、血管破壊効果に最大で約14%の差が生じる。(2)小さい金ナノ粒子(直径20 nm)ほど短時間で血管から拡散するため、時間が経つにつれ、大きい金ナノ粒子(直径100 nm)の方が小さい金ナノ粒子より高い効果を示すようになることが明らかとなった。これは金ナノ粒子を用いた血管破壊治療時の誤差を低減するため有用な知見である。さらに、より非侵襲的な治療をするための、最適なパラメータの選択を可能とするといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
クラスターを形成した金ナノ粒子が及ぼす放射線量の増加をシミュレーションによって推定したため。また、金ナノ粒子の血管破壊剤利用時の、有用なパラメータを選定したため。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、シミュレーションで選定されたパラメータを活用し、マウスモデルに対してナノ粒子を用いた血管破壊治療を行う。治療前後の超音波・MRI画像から血管破壊の程度の定量化を行い、治療効果の推定を試みる。
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