2018 Fiscal Year Annual Research Report
介在物の溶解生成物を不働態化剤として利用するステンレス鋼の新規高耐食化技術の創出
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17J03625
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
西本 昌史 東北大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 腐食防食 / ステンレス鋼 / 孔食 / 介在物 / 耐食性 |
Outline of Annual Research Achievements |
ステンレス鋼の代表的な添加元素であるMoの作用機構を解明し、介在物起点の孔食防止につながる知見を得た。具体的には、Mo無添加ステンレス鋼およびMo添加ステンレス鋼中のMnS介在物の塩化物水溶液中における溶解挙動と孔食発生挙動を解析し、MnS起点の孔食発生過程に及ぼすMo添加の影響を解析した。 MnS介在物を含む微小電極面(約100μm×100μm)において、塩化物水溶液を用いて動電位アノード分極を行ったところ、Mo無添加鋼中のMnSは低い電位域でアノード溶解し、MnSを起点に孔食が発生した。腐食形態を詳細に観察したところ、MnSと鋼母相との境界部が溝状に侵食されており、溝の内部から孔食が発生したことがわかった。一方、Mo添加鋼においてもMnSは低い電位域でアノード溶解するものの、孔食は発生しなかった。さらに、Mo添加鋼ではMnS/鋼界面の溝状の溶解が抑制されることを確認した。溝状溶解が抑制される理由は、鋼に添加されたMoが不働態皮膜の保護性を改善し、MnS近傍の強腐食性環境に対する耐性を高めるためであることがわかった。また、Mo添加鋼においても高い電位域まで分極するとMnS/鋼界面に溝は形成されるが、Mo添加鋼の塩酸環境中における活性溶解速度はMo無添加鋼に比べて遅いため、たとえ溝が形成された場合でも溝内部で孔食が発生しにくいことがわかった。MnS起点の孔食を防止するためには、孔食発生の前駆段階であるMnS/鋼界面の溝形成を抑制することが効果的であると思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
MnS介在物を起点とするステンレス鋼の孔食発生過程におけるMoの作用機構を明らかにしたため。Mo添加によりMnS/鋼界面の溝状溶解が抑制された。溝状溶解が抑制される理由は、鋼に添加されたMoが不働態皮膜の保護性を改善し、MnS近傍の強腐食性環境に対する耐性を高めるためであることがわかった。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度はMnS介在物を起点とするステンレス鋼の孔食発生過程におけるMoの作用機構を明らかにした。次年度は、ステンレス鋼に微量元素を添加して介在物組成を変化させ、介在物組成とステンレス鋼の耐食性との関係を系統的に調査する。
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