2017 Fiscal Year Annual Research Report
有機半導体と金属錯体からなる可視光駆動型二酸化炭素還元光触媒系の創製
Project/Area Number |
17J03705
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
栗木 亮 東京工業大学, 理学院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 光触媒 / 二酸化炭素還元反応 / 有機半導体 / 金属錯体 / 水中 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、有機半導体と金属錯体を融合した光触媒を用い、可視光照射下、水中にて、水を還元剤とした二酸化炭素還元反応の駆動を目指して研究を推し進めている。 この反応の駆動するための前段階として、可視光照射下にて、水溶液中で二酸化炭素の還元反応を駆動させることが必要不可欠である。可視光下、水溶液中にて二酸化炭素の還元反応を駆動した例は少数あるが、いずれも副反応である水素生成反応が競合し、目的とする反応(二酸化炭素の還元反応)を高効率、高選択的に駆動することは困難であった。事実として、我々が報告した先行例(R. Kuriki., et. al, J.Am.Chem.Soc.2016,138(15),5159-5170.)では、二酸化炭素還元における触媒の回転数、選択率は、それぞれ660, 75%程度に止まっていた。本年度はこの改善を目指した。低い活性(選択性)の主要因として、水溶液中における反応条件の検討が不十分、かつ水溶液中で金属錯体が有機半導体上から脱離することが挙げられる。 本年度の研究にて、従来のメソポーラス構造を有する有機半導体カーボンナイトライドからナノシー ト構造を有する有機半導体へと半導体部位を変化させることで、金属錯体とホスフォン酸アンカーを介して比較的強固に複合化できることを見出した。さらに、反応条件(特にpH条件、緩衝剤となる塩の添加効果)を種々検討することで、触媒回転数を最大で2100,二酸化炭素還元の選択率を98%まで高めることに成功した。これらの値は、可視光照射下、かつ水溶液中で二酸化炭素還元反応を駆動した例では過去最高の値である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
申請者は本年度、従来困難だった水溶液中で高効率な二酸化炭素還元反応を駆動することに成功した。従来用いていたメソポーラス型のカーボンナイトライドからナノシート構造を有するものへと変えることで、金属錯体との強固な吸着を誘発し、結果として広いpH条件、過度の塩の添加下という従来困難であった状況下でも反応の駆動に成功した。反応条件を整えた結果、触媒耐久性は従来の約3倍の2100に達し、ギ酸生成に対する選択率も70%以下から約100%へと向上することに成功した。なお、論文発表や学会発表を通じて本成果を公表した。以上の結果から、当初の計画以上に進展したと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
有機半導体と金属錯体を融合した系を展開する上では、両者の間の電子移動過程を詳細に調べること(観測し速度定数を見積もること)が一つの重要な課題である。しかしながら、現状まで、有機半導体と金属錯体を融合した二酸化炭素還元系において、そのような電子移動過程を実測した例はない。そこで今後は、有機半導体の過渡的な発光挙動、および吸収挙動に注目することで、有機半導体から金属錯体への電子移動過程の観測を試みる。そして、分光学的な側面から、本系の理解をさらに深める。 また、今までの知見を統合することで、水を還元剤とした反応の駆動、広域可視光を利用したシステムへの展開、貴金属を用いない系への展開といった本系の発展(一種の高機能化)も同時に行う予定である。
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Research Products
(8 results)