2017 Fiscal Year Annual Research Report
筋萎縮性側索硬化症の病態とストレス顆粒との関連性の解明と、新規の病因遺伝子の探索
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17J03762
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
成瀬 紘也 東京大学, 大学院医学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 筋萎縮性側索硬化症 / ALS / ストレス顆粒 |
Outline of Annual Research Achievements |
筋萎縮性側索硬化症 (ALS) の病態とストレス顆粒 (stress granule: SG) の形成の関連性の解明,およびALSの新規の病因遺伝子の同定を目指した.87例の家族性ALS (FALS) と377例の孤発性ALS (SALS) を解析対象とし,全症例でexome解析 (Illumina Hiseq2500) を実施した. FALS症例では,HNRNPA1,TBK1,VCPの各遺伝子の新規変異を同定した.臨床病型の検討に加え,変異の健常対照例での頻度,変異の部位,機能予測による変異の有害性の評価,培養細胞を用いた機能解析実験での病原性の評価を検討し,いずれも病原性変異の可能性が高いと考えられた.特にHNRNPA1の新規変異から,核局在シグナルの機能とALSの病態に関わるSGの形成との関連を明らかにした (Naruse H, et al. Neurobiol Aging. 2018;61:255). SALS症例では,SALSの12例 (3%) に病原性変異を検出した.欧米の大規模exome関連解析により,LoF (機能喪失型) バリアントとSALS症例との関連が見出されたNEK1, TBK1遺伝子に着目した.日本人のSALS症例でも同様に関連が見られるかを検討し,SALS群で健常対照群よりも有意に多くのNEK1遺伝子のLoFバリアントが検出された. ALSの病因遺伝子上の複数のバリアントが臨床病型を修飾するかをexome解析データから検討した.ALSの病因遺伝子 (17個) の,病原性変異と考えられるバリアントおよびdeleteriousと考えられる稀なバリアントは,FALS症例の56例 (64.4%),SALS症例の78例 (20.7%) に検出された.FALSの7例,SALSの6例で稀なバリアントが2個以上検出され,これらの症例の臨床病型についてまとめた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
筋萎縮性側索硬化症 (ALS) の病態とストレス顆粒 (stress granule: SG) の形成との関連性の解明,およびALSの新規の病因遺伝子の同定の研究を進めた. Exome解析を含む網羅的ゲノム解析に基づきALSの病因遺伝子を探索し,家族性ALSにHNRNPA1, TBK1, VCP遺伝子の新規変異を見出した.HNRNPA1の新規変異から,核局在シグナルの機能とALSの病態に関わるSG顆粒の形成との関連を詳細に明らかにした.本結果を論文で報告した (Naruse H, et al. Neurobiol Aging. 2018;61:255). さらにexome解析を含む網羅的ゲノム解析を孤発性ALSについても併せて実施し,孤発性ALSで特定遺伝子の機能喪失型バリアントが多く見られること,病因遺伝子の稀なバリアントの重複と臨床病型との関連について,日本人ALS集団で初めて示した. 以上のように,ALSの病因遺伝子の同定からALSの病態の解明に向けた研究が進展しており,今後はSGの形成に関わる新規の病因遺伝子の同定など,更なるALSの病態の解明が期待される.
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Strategy for Future Research Activity |
筋萎縮性側索硬化症 (ALS) の病態とストレス顆粒 (stress granule: SG) の形成との関連性の解明,およびALSの新規の病因遺伝子の同定のための研究を継続する.ALSの新規の病因遺伝子の同定のため,ALS症例の収集に努める.同時に,87例の家族性ALS (FALS) 症例(家系発端者)と377例の孤発性ALS (SALS) 症例のexome解析データを活用して,ALSの疾患関連遺伝子のバリアントについて検討する. 今回網羅的exome解析により得られた情報を用いて,ALSの病因遺伝子上の複数のバリアントが臨床病型を修飾するかどうかの検討を行った.その結果,ALSの病因遺伝子 (17個) の,病原性変異と考えられるバリアントおよびdeleteriousと考えられる稀なバリアントは,FALS症例の56例 (64.4%) ,SALS症例の78例 (20.7%) での検出にとどまっている.特にSALSの症例の大部分で病原性変異が検出されないことから,多因子疾患として位置づけ,大規模なexome関連解析を用いた更なる疾患感受性遺伝子の探索を進め,ALSの病態機序の解明を目指す必要が考えられた. そこで今後はSGの形成に関わる新規の病因遺伝子の同定についても検討していく.ALSの病態とSGの過剰形成との関連性の解明のため,収集を継続しているALS症例および健常対照例のexomeに基づく関連解析の結果を用いて,SG形成に関わる候補遺伝子の抽出と,機能解析実験の解析対象とする遺伝子の絞り込みを進めていく.
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Research Products
(3 results)