2017 Fiscal Year Annual Research Report
Multi-optical biosensing using glycopolymers
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17J03810
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
寺田 侑平 九州大学, 工学府, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 糖鎖高分子 / バイオセンシング / 表面プラズモン共鳴 / 高分子合成 / 分子認識 |
Outline of Annual Research Achievements |
糖鎖高分子ータンパク質の相互作用について、光学的手法である表面プラズモン共鳴(SPR)センサーを用いて網羅的な解析を行った。ターゲット分子としては有害な毒素であるコレラ毒素に着目した。コレラ毒素はオリゴ糖鎖の一つであるGM1を特異的に認識することが知られており、本研究ではGM1を模倣した糖鎖高分子を複数種類合成した。アルキンを側鎖にもつモノマーを重合することによって糖鎖高分子の主鎖となる部分を合成し、そこにGM1に含まれる糖鎖などをクリック反応の一つであるアジドーアルキン環化付加反応によって導入することで糖鎖高分子を容易に得られた。合成した糖鎖高分子の水溶液を、複数の金スポット上における生体分子間の相互作用を一度に測定することができるSPRイメージング用の金チップに静置することで固定し、コレラ毒素のGM1結合部であるBサブユニット(CTB)との相互作用について網羅解析を行った。 これまで糖鎖高分子を用いたコレラ毒素の認識については、ガラクトースを用いた糖鎖高分子が主として用いられてきたが、本研究においてガラクトースに加えシアル酸を同一の高分子主鎖に導入した糖鎖高分子がガラクトースのみを用いた糖鎖高分子に比べて約1000倍もの結合能の増強を示すことが明らかとなった。今回の結果により、簡便な手法で合成される糖鎖高分子を用いて、実用的なタンパク質ターゲットに対して高い認識能を持つ糖鎖高分子を得ることが可能であること、さらに多くの種類の糖鎖高分子の分子認識能について容易に網羅解析が可能であることが分かった。本研究において得られた結果は、糖鎖工学の観点および糖鎖高分子を用いたバイオマテリアル開発への貢献に向けて有益である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では、実用的なタンパク質ターゲットとしてコレラ毒素を選択し、コレラ毒素に対して高い分子認識能を持つ糖鎖高分子について、網羅的な高分子合成および光学バイオセンシングによる網羅解析によって明らかにしていくことを目的とした。研究を始める以前では、ターゲット分子に対して糖鎖高分子がより高い認識能を有するために適した高分子の設計、具体的には導入する必要がある糖鎖の種類および主鎖における糖鎖の割合といった設計指針までを明らかにすることを期待していた。特に複数の種類の糖鎖を導入した糖鎖高分子については、模倣するオリゴ糖鎖がタンパク質認識に必要とする全ての糖鎖を導入し、さらに配列なども制御しなければ高い認識能を得るのは難しいと予想していた。 しかしながら、研究の結果、2種類の糖鎖をランダムに導入した糖鎖高分子がターゲット分子に対して高い認識能を有することがわかり、今まで用いれていた1種類の糖鎖のみを導入した糖鎖高分子に比べて結合能の高い糖鎖高分子合成に成功した。研究の計画段階では、今後、得られた結果による糖鎖高分子の設計指針に基づいて糖鎖高分子を合成・再評価を行った後に実用的なバイオセンサーの開発を目指す予定であったが、すでに高い認識能を持つ糖鎖高分子を得られたため、より早い段階で実用的バイオセンサーの開発に取り組むことができる。
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Strategy for Future Research Activity |
網羅的な光学バイオセンシングにより明らかとなった、ターゲットに対して高い分子認識能を発揮する糖鎖高分子をナノオーダーの光学センシング素子となる材料に応用し、実用的な光学バイオセンサーの開発を目指す。同時に、糖鎖高分子の設計について高分子の長さおよび導入するそれぞれの糖鎖割合を精密に制御し、より高い分子認識能を持つ糖鎖高分子の合成が可能かについて検討を行っていく。金ナノ粒子やポリスチレン微粒子などに分子認識素子として糖鎖高分子を修飾し、それぞれの微粒子によって発揮することが可能な局在表面プラズモン共鳴および構造色といった光学的特性を利用した光学バイオセンシングについて、センシングパフォーマンスを確認していく。これにより、大規模な装置を必要とせず、かつその場検出が可能な実用的バイオセンサーの実現が見込まれる。また、より高い分子認識能を発揮する糖鎖高分子の検討については、分子鎖長を制御可能なリビングラジカル重合を用いて再度網羅的な合成を行い、複数の糖鎖の導入率制御についてクリック反応の合成手法の範囲内で可能であるか試行錯誤的に実験を進める。
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