2017 Fiscal Year Annual Research Report
戦前日本における近代水道が死亡率に与えた影響について
Project/Area Number |
17J03825
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
井上 達樹 東京大学, 経済学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 経済史 / 計量経済学 / 日本 / 都市 / 公衆衛生 / 死亡率 / 近代水道 |
Outline of Annual Research Achievements |
プロジェクトの第一年度にあたる本年度は、次年度以降の統計解析に必要なデータ・ベースの構築に重点を置いた。第一に、都市別の死因別死亡数や上水道、人口といった情報についての統計史料及びそれらに関連する記述資料の収集を完了した。第二に、収集した統計史料に記載されたデータを電子化する作業を行った。これにより、統計解析に使用可能な1922年から1940年における108都市の都市別パネル・データを構築した。さらに、作成済みであった社会経済変数に関する都道府県別パネル・データを接合することで、包括的なデータ・ベースを完成させた。第三に、記述資料を用いた史料分析によって、正確な史実を把握するとともに、構築したデータ・ベースとの整合性を確認した。加えて、当時の伝染病院についての史料から、欧米とは異なる日本の合併症の特色が明らかにした。こうした作業と並行して、都市別パネル・データからは把握が困難である都市内の異質性(heterogeneity)に着目した関連研究を行った。新たに発見した1920年代前半の京都市に関する貴重な統計史料を用いて構築した、水道普及率や人口密度、世帯人員、腸チフス罹患率などの町丁別クロスセクション・データを使用し、腸チフスの罹患率に対する様々な要因による影響を定量的に分析した。得られた解析結果は、国内の主要学会(社会経済史学会)やワークショップで報告し、複数のコメントを得た。それらを反映し論文としてまとめ、国内の査読付き学術誌に投稿し、改訂要求を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
史料情報の電子化によるデータ・ベースの構築とその修正に想定以上に時間がかかったが、当初の計画にしたがって、史料収集、データ・ベースの構築、史料分析を完了することができた。さらに、都市内部に焦点を当てた研究成果については、国内の学会・研究集会で報告を行うことで有益なコメントを受けることができ、査読付き学術誌から改訂要求を得ている。以上から、本年度の研究の進捗状況は、計画にしたがい順調に進展していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は順調に進展したため、次年度も当初の計画にしたがい、記述史料から把握した史実に基づいた統計モデルの定式化と都市別パネル・データを用いた回帰分析を試行することで、仮説に沿った統計解析モデルを構築する。これにより、近代上水道が消化器系疾患以外による死亡に与えた影響を分析していく。得られた研究成果は、国内外の学会・研究集会で報告したいと考えている。また、既に改訂要求を得た論文については、次年度内の採択を目指す。
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Research Products
(2 results)