2018 Fiscal Year Annual Research Report
The effect of modern water-supply systems on the mortality rate in prewar Japan
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17J03825
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
井上 達樹 東京大学, 経済学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 経済史 / 計量経済学 / 近代日本 / 公衆衛生 / 死亡率 / 疾病 / 近代水道 / 腸チフス |
Outline of Annual Research Achievements |
プロジェクトの第二年度にあたる本年度は、前年度に構築したデータ・ベースを用いた統計解析を実施し、得られた推定結果を基に論文をまとめた。作業工程としては、第一に、記述史料を用いた史料分析により把握した史実に加え、近年の医学的知見を根拠とし、本研究課題の核となる仮説を再構築した。具体的には、近代水道の普及が腸チフスの抑制を通じて水因性以外の疾患による死亡を減じたという仮説において、死亡リスクが減少した疾患として、腸チフスの合併症として観察され得る肺結核、肺炎、髄膜炎、心臓病、脚気を新たに定めた。第二に、仮説に沿った統計モデルを定式化し、統計解析を行った。これにより、近代水道の普及が上記疾患による死亡率の減少に寄与していたことを明らかにした。同時に、天然痘、ジフテリア、百日咳、はしか、インフルエンザ、腎臓病などの他の死因による死亡率には影響を与えなかったことを解明した。第三に、潜在的な内生性の問題に対処するため、操作変数を用いた分析を行なった。加えて、得られた推定結果の頑健性を検証するため、複数の統計学的テストを実施した。検定結果は、いずれも統計解析結果の頑健性を支持するものであった。最後に、これら一連の分析結果を論文としてまとめ、国際学術誌に投稿し、改訂要求を得た。こうした作業と並行して、戦間期日本における死亡率に関連する副次的テーマとして、世帯員の死亡や病気への罹患がもたらす家計への負荷に対して、低所得世帯がどのような対処を講じていたかを明らかにするための分析に着手した。1915から1924年における市郡単位のデータ・ベースを構築し、パネルデータの利点を活かして固定効果モデルを用いた統計分析を行うことで、一定の解析結果を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、前年度作成したデータ・ベースを用いて統計解析を実施し、得られた研究成果を論文としてまとめた。論文は査読付き国際学術誌に投稿し、改訂要求を得ている。さらに、関連する研究についても、次年度開催される国内外の学会における発表の申請が受理されている。以上から、本年度の研究の進捗状況は、計画にしたがい順調に進展していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる次年度では、今年度新たに改訂要求を得た論文、及び昨年度から審査が継続している論文については、改訂作業を進め、採択されることを目指す。また、次年度初めに国内外の学会で報告を予定している研究については、得られたコメントを反映し論文としてまとめ、査読付き国際学術誌への掲載を目指す。
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Research Products
(3 results)