2017 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17J03839
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
越智 拓海 九州大学, 大学院薬学研究院, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | ガストリン放出ペプチド / ガストリン放出ペプチド受容体 / 痒み伝達 / アレルギー性掻痒症 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年,脊髄後角で発現するガストリン放出ペプチド(GRP)受容体発現ニューロンが,脊髄レベルで身体の痒みを特異的に伝達することが報告された。研究代表者はこれまで同じ脊髄に存在し,雄の性機能を制御する脊髄GRP系に着目し,GRPニューロンを中心とした脳-脊髄神経ネットワークを明らかにしてきた。現在は,GRP系を中心とした痒み伝達に関わる神経ネットワークの解析を進めている。 まず,必須脂肪酸とコーンスターチを除去したエサを与え,アトピー性皮膚炎モデルの作出を行った。現在,作出したアトピー性皮膚炎モデルでの痒みの指標となる掻き行動を解析し,痒み評価系の確立を行っている。さらに,acetone-ether-water(AEW)を皮膚に塗布し,ドライスキンモデルの作製を試みた。結果,AEW塗布部位において皮膚の過敏が観察された。また,GRPニューロンが緑色蛍光タンパク質のVenusで標識されるGRPトランスジェニック(Tg)ラットを用いて,痒み伝達に関わるGRPニューロンが存在する脊髄後根神経節と三叉神経節のVenus発現を解析した。結果,脊髄後根神経節,三叉神経節ともにVenus発現が観察された。また,GRP Tgラットの脊髄後根神経節ならびに三叉神経節においてGRPに対する免疫染色を行った結果,Venus陽性ニューロンの一部でGRP免疫陽性が観察された。さらに,GRP受容体に対するin situ hybridizationの確立を行った結果,痒みに関わるGRP受容体発現ニューロンが存在する脊髄後角においてシグナルが多数観察された。また,GRP受容体発現ニューロンが赤色蛍光タンパク質(RFP)で標識されるGRP受容体 Tgラットを用いてRFPシグナルを指標に三叉神経核および脊髄後角におけるGRP受容体の局在を解析した結果,脊髄後角と三叉神経核でRFPシグナルが観察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本学術振興会特別研究員(PD)に採用されて以来,痒み伝達に関わるガストリン放出ペプチド(GRP)/GRP受容体ニューロン系に着目したアレルギー性掻痒症の神経機構の解明を精力的に進めている。本年度は掻痒症モデルラットを作出し、現在は、本モデルラットを用いて痒み評価系の確立を行っている。さらに,痒み伝達に関わるGRP受容体ニューロンの局在を明らかにするため、RNA scope法を用いたGRP受容体の組織学的な解析手法を確立した。現在は、GRP受容体Tgラットを用いて、RFPニューロンでGRP受容体が発現することを確認している。また、GRPあるいはGRP受容体遺伝子改変ラットを用いた解析により,痒み伝達に関わるGRP/GRP受容体発現ニューロンの脊髄ならびに三叉神経節における局在を蛍光シグナルを指標に明らかにしつつある。以上の理由から,おおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
作出したアトピー性皮膚炎モデルで痒み評価系を確立し、アトピー性皮膚炎発症時の痒み応答を解析する。また、real-time PCR法を用いて、アトピー性皮膚炎モデルでのGRP系の分子発現の変化を解析する。また、GRP Tgラットにおいても、アトピー性皮膚炎モデルを作出し、脊髄後根神経節におけるVenus mRNA発現量をreal-time PCR法を用いて定量化し、身体の痒み神経機構の解析モデルを確立する。顔面の痒み神経機構を明らかにする目的で、ラットにヒスタミンを点眼投与し、アレルギー性結膜炎発症ラットを作出する予定である。次に、野生型ラットの延髄あるいは脊髄後角最表層にGRPを局所投与した後、掻破行動解析を行い、GRPによる痒みの誘起を明らかにする予定である。同時に、GRP受容体Tgラット脊髄後角にGRPを局所投与し、GRPによる痒み伝達に関わるGRP受容体ニューロンの活性化を解析する。さらにBombesin-saporinを、GRP受容体Tgラットにジフテリア毒素を、脊髄後角最表層に局所投与することで、痒み伝達に関わるGRP受容体発現ニューロンを特異的に破壊し、掻破行動解析を行う。これらの解析により、GRP系を介した全身の痒み伝達メカニズムを明らかにする予定である。 さらに、GRP Tgラット三叉神経節、脊髄後根神経節とGRP受容体Tgラット延髄および脊髄後角をスライス培養し、パッチクランプ法を用いて蛍光シグナルを指標にGRPニューロンやGRP受容体ニューロンの起痒物質に対する応答性を電気生理学的に解析する。
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Research Products
(5 results)