2017 Fiscal Year Annual Research Report
免疫寛容を回避した特異体質薬物毒性の高感度予測基盤の構築
Project/Area Number |
17J03861
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
薄田 健史 千葉大学, 薬学研究院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | HLA / 特異体質薬物毒性 / 免疫毒性 / 免疫寛容 / T細胞 / PD-1 / 毒性評価モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、薬物とヒト白血球抗原(HLA)多型との相互作用により発症する特異体質性の薬物毒性について、創薬初期に精度よくその発症リスクを予測する方法を確立することを目的にしている。これまでに、ヒト-マウスキメラ型HLA遺伝子(HLA-B*57:01)を導入したトランスジェニックマウス(B*57:01-Tg)を新規に作出し、局所的な皮膚感作性試験により「抗HIV薬アバカビルとHLA-B*57:01遺伝子との相互作用による異常な免疫応答」が評価可能なことを見出している。しかしながら、アバカビルをB*57:01-Tgに経口投与した際には臨床で報告されているような皮疹が認められず、発症リスク予測モデルとして不完全であることが問題点となっていた。 そこで、寛容系の免疫応答がB*57:01-Tgにおける特異体質薬物毒性の再現において障害となりうることを仮説として、B*57:01-Tgから寛容系の免疫応答の代表格とされるPD-1受容体を排除した動物モデル(B*57:01-Tg/pd-1-/-)を新規に作出した。当初はPD-1受容体を欠損させることで自己免疫疾患等によりB*57:01-Tg/pd-1-/-が正常に出生・生育できないことが懸念されたが、特にそのような問題は見られていない。 一方で、1%アバカビルを含む混餌をB*57:01-Tgに1週間経口投与したところ、メモリーCD8+ T細胞表面のPD-1受容体の発現量が増加している傾向が認められた。さらに、経口投与する期間を2週間に伸ばしたところ、その発現量が顕著に増加していることが確認された。この結果は本研究の仮説を裏付けるものであり、PD-1受容体が特異体質薬物毒性の発症における障害となっていることが強く示唆された。 今後B*57:01-Tg/pd-1-/-を用いることで、特異体質薬物毒性が鋭敏に評価可能となる系を確立できるものと期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
年次計画通りB*57:01-Tg/pd-1-/-を作出することができたため。また、系統を維持できるまでの間にB*57:01-Tgを用いた予備検討を実施し、特異体質薬物毒性発症を障害する免疫寛容系としてPD-1受容体の重要性を示すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度はB*57:01-Tg/pd-1-/-を使用した薬物毒性試験を実施し、特異体質薬物毒性を鋭敏に評価可能となる系を確立することを目指す。加えて、他の免疫寛容系としてCTLA-4受容体や制御性CD4+ T細胞の存在も挙げられているため、これらの因子についても特異体質薬物毒性への関与の有無を検証する。関与があった場合は、抗CTLA-4抗体や抗CD4抗体の処置によりこれら因子の不活化を試みることを考えており、さらに高感度な評価系を実現することを目指す。 また、本評価系を将来的にスケールダウンし、in vitro毒性試験系やin silicoドッキングシュミレーションとしての活用することも視野に入れている。そこで、種々の免疫細胞の共培養によるin vitro実験によっても特異体質薬物毒性が評価可能となりうるか検証することや、特異体質薬物毒性発症時に増加する異常T細胞受容体の構造を解析することも並行して検討したいと考えている。
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Remarks |
所属研究室webページ
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