2018 Fiscal Year Annual Research Report
生体内の環境変化に応答する多機能分子プローブの開発と病的組織のイメージング
Project/Area Number |
17J03866
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
梅原 由衣 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 分子イメージング / 腫瘍 / りん光イメージング / 光音響イメージング / ナノ粒子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、生体内の環境変化に応答する多機能分子プローブの開発と病的組織のイメージングを目的とする。平成29年度までに、MCM-41タイプで粒径が200~500 nmと比較的大きな多孔性シリカナノ粒子を用い、一重項酸素が細孔内で失活することを確認している。しかしながら、生体に応用するためには、より小さな粒径の多孔性シリカナノ粒子が必要であった。そこで、平成30年8月~10月末まで,オーストリア・ウィーン大学のFreddy Kleitz教授研究室に滞在し、種々の粒径を有する多孔性シリカナノ粒子の合成法と解析法を習得した。具体的には、MCM-41タイプに加え、3次元構造を有するMCM-48タイプの多孔性シリカナノ粒子を合成し、窒素吸着による細孔径・細孔体積の計測、および小角X線散乱による結晶構造解析を行った。一方、多孔性シリカナノ粒子としては、平均粒径が50 nm、100 nm、150 nmの粒子の合成に成功した。帰国後は、(2)合成した多孔性シリカナノ粒子の表面?に導入したチオール基およびイソシアナート基を利用し、りん光発光性ルテニウム錯体を化学的に固定した新しいルテニウム/多孔性シリカナノ粒子プローブを合成した。新たに合成したプローブは、既に、合成・機能評価に成功しているMSN-Ruプローブに匹敵する高い酸素濃度応答性を示すことを確認した。 (3)両末端にチオール基とアミノ基を有するポリエチレングリコール鎖は、チオール基で金ナノロッド表面にに、アミノ基を利用して2-ニトロイミダゾール基を導入することにより、腫瘍低酸素環境を可視化する光音響イメージングプローブ(G-NI)について、細胞内での G-NIの局在化の検討と一細胞あたりのG-NIの取込み量を定量した結果を纏めてRSC Advances 誌に投稿し、accept された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通りに進展している。様々な粒径を有する多孔性シリカナノ粒子の合成に関しては、3か月間、Kleitz教授研究室に滞在し、粒径制御や物性の解析法を習得した、さらに、多孔性シリカナノ粒子の表面に官能基を導入する方法を習得した。粒径の制御が可能である多孔性シリカナノ粒子は、活性酸素種である一重項酸素の失活過程の解析、および生体応用に向けた極めて重要な材料である。一方、多孔性シリカナノ粒子の表面への官能基の導入は、それらの官能基をトリガーとして、抗体などのターゲティング機能を有する分子の導入に極めて有効である。また、最終年度に向けて、りん光発光性ルテニウム錯体と酸素濃度の影響を受けない蛍光色素(参照色素)とを同時に固定(導入)したレシオメトリック型イメージングプローブの合成を開始した。
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Strategy for Future Research Activity |
生体内低酸素を可視化することを目的とし、りん光発光性ルテニウム錯体を多孔性シリカナノ粒子に固定化した新規ナノ粒子プローブについて、異なる粒径と多孔性シリカナノ粒子が、プローブの毒性、細胞レベルでの酸素濃度応答性、およびマウスの下肢結紮による急性低酸素環境の可視化に与える影響を明らかにし、生体内酸素濃度センサープローブを合成する。さらに表面に官能基を有する多孔性シリカナノ粒子を合成し、官能基をトリガーとする表面修飾により、生体適合性と腫瘍集積性が向上した Ru-MSNプローブを合成し、腫瘍細胞内の慢性的な低酸素環境を可視化する。 一方、酸素濃度の影響を受けず、ルテニウム錯体によるりん光発光波長と重ならない最適の蛍光色素を選択し、最適化した多孔性シリカナノ粒子に同時に固定(導入)することにより、レシオメトリック型イメージングプローブを開発する。細胞内酸素濃度の定量が可能であった場合には、下肢結紮マウス、および担癌マウスにプローブを尾静脈投与し、急性および慢性的な生体内酸素濃度変化の定量的画像化の可能性を明らかにする。 さらに、光音響/近赤外蛍光デュアルイメージング型pH応答性プローブについては、血中アルブミンとの相互作用の向上を目指し、プローブの構造最適化に取り組む。最終的には、最適化したpH応答性プローブを担癌マウスに尾静脈投与し、光音響イメージングおよび蛍光イメージング画像により、抗癌剤等の投与によるリソソーム内のpH変化を可視化する可能性を明らかにする。
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