2018 Fiscal Year Annual Research Report
天然物を基盤とした次世代プロテアソーム阻害剤の創製研究
Project/Area Number |
17J03932
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
北畑 舜 北海道大学, 生命科学院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 創薬化学 / 有機化学 / 生理活性天然物 / プロテアソーム / 多発性骨髄腫 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は難治性疾患である多発性骨髄治療薬の開発を目的として、1)標的酵素であるプロテアソームを選択的に阻害する天然物シリンゴリンAの構造活性相関研究を行った後、2)既存薬耐性多発性骨髄腫に有効な高活性誘導体を創出し、3)得られた高活性誘導体に対してがん細胞選択的な輸送を可能にする低分子リガンドを導入する。 シリンゴリンAは生物活性が薬剤として不十分であり、合成経路にも課題を残していることから、これまでに独自の合成経路により誘導体化し、自身で生物活性の評価を行うことで効率的な創薬研究を進めている。筆者が開発したシリンゴリンA誘導体の合成法を用いて、シリンゴリンが有する特徴的な構造である環構造の大きさや二重結合の位置が異なる誘導体、その幾何異性体、側鎖誘導体などの多数の誘導体を合成した。合成した誘導体にいて、プロテアソーム阻害活性とヒトがん細胞増殖抑制活性の評価を行った。また、プロテアソーム阻害活性発現の詳細について、合成した誘導体とプロテアソームを用いた反応速度論解析を行い、その結果に基づいて、さらに親和性の高い側鎖部の導入を検討した結果、天然物の880倍の高いプロテアソーム阻害活性を示す新規誘導体を見出すことに成功した。本年度では更なる誘導体の合成展開に加え、戦略的に薬剤耐性多発性骨髄腫に有効な誘導体を見出すことを目的として、プロテアソームのサブユニット選択性を制御した化合物の合成を行った。また、がん細胞選択的な輸送を可能にする分子との結合についての検討も現在進めている。本研究は詳細な速度論解析や戦略的な誘導体合成を行うことで、今後の誘導体設計に活用可能な知見を得たことや、実際の薬剤耐性多発性骨髄腫細胞株に有効な化合物を創出する点で重要な研究内容である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
筆者はこれまでにシリンゴリンAの誘導体合成を独自の合成経路で行うことでシリンゴリンA誘導体群を合成し、その活性評価とプロテアソームとの反応速度論解析を行った。現在までに得られた反応速度論解析の結果を参考に更なる誘導体群の合成を行った。また、多発性骨髄腫細胞に対して有効な誘導体を見出すため、プロテアソームのサブユニットに着目した研究を進めてきた。薬剤耐性多発性骨髄腫の特徴として、プロテアソームが基質を認識する際のサブユニット選択性が変化するという知見を参考に、サブユニット制御型シリンゴリンA誘導体の合成を行った。サブユニット毎にシリンゴリンAを認識するポケットのアミノ酸が異なることに着目し、シリンゴリンAに対してアミノ酸との相互作用を増強させられるような化合物設計を行った。実際に合成した誘導体に関してプロテアソーム阻害活性、およびサブユニット毎の阻害活性評価を行うことで、設計通り選択性の制御ができていることを確認した。さらに、得られた化合物についてリンカーを介してがん細胞標的化分子を導入する検討についても進めており、数種類のリンカーを有する誘導体の合成を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究により高活性プロテアソーム阻害剤およびサブユニット選択性を制御した誘導体の合成に成功したため、今後はこれらの分子の詳細な細胞への活性とがん細胞標的化研究について検討していく予定である。これまで合成した誘導体について、酵素活性での結果がよかったものについては細胞系での機能を評価し、その標的選択性や代謝安定性も含めて検討していくことを計画している。がん細胞標的化研究については数種類のリンカーを導入したシリンゴリンA誘導体の合成を現在進めており、リンカーの種類や適切ながん細胞標的化分子についても今後検討していく予定である。細胞系について良好な結果が得られた分子が見つかった場合、その多発性骨髄腫細胞への選択性評価や生体内での機能解析を含めた実験について進めていく予定である。
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Research Products
(3 results)