2017 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17J03947
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
宍戸 聖 京都大学, 法学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 独占禁止法 / 私的独占 / 反トラスト法 / EU競争法 / 不当廉売 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本では私的独占として規制される、支配的事業者等による排除行為の規制において、競争者排除型の行為の不当性識別は予てからの重要課題の一つである。競争事業者の事業活動を困難にするという意味での競争者の排除は、活発な競争の反映に過ぎないとも言える。そのため、競争法上非難に値するような不当な排除と正当な競争行動を通じた排除の識別が重要である。 現在の日本においては各行為類型に普遍化できるような排除識別基準の検討が必要であるが、終始抽象論を展開することにならないようにするためには、個別の行為類型に固有の問題を論じることを通じて普遍的な排除識別の議論を立体的に見るための準備を行う必要もある。そこで、不当廉売や取引拒絶といった行為類型に固有の排除行為識別の問題を論じることを通じて、各基準の有用性に関する検討をもとに、最終的に排除行為の識別基準の在り方を論じるための多角的な視座を得る事を目指す。 当初の研究計画では、初年度に各行為類型に普遍する排除識別基準の検討を行い、そのうえで次年度に競争者排除行為の各類型に固有の問題に着目して従来の識別基準の有用性を確認する予定であった。しかしながら、検討対象とする予定であった行為類型のうち、特に不当廉売行為に関しては、計画当初に想定していたよりも多くの論点を取り上げる必要があることがわかった。そこで、計画を変更し、先に競争者排除行為の各類型に固有の問題に着目した検討を行い、その検討を踏まえて各行為類型に普遍する排除識別基準のあり方を論じることにした。 そのため、初年度は、変更後の計画に従い、まず、米欧における低価格設定行動に関する規制との比較に基づき、低価格設定が不当とされる理論的根拠を整理し、従来検討されてこなかったタイプの低価格販売における不当性の識別方法を検討した。この検討の成果は、2018年度中に公表論文として学内紀要に投稿する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、独禁法の各行為類型に固有の議論に関する検討を通じて、競争者排除型の行為の不当性識別に用いられる普遍的な排除の識別基準の確立を目指すものである。しかし、各行為類型に固有の問題に関する検討には、研究計画策定当初に想定していたよりも多くの労力が必要であることがわかり、先にその検討を行い、そのうえで、各行為類型に普遍的な排除の識別基準の評価を行い、それらを踏まえて普遍的な排除の識別基準の確立、及び、世界の競争法に普遍化可能な議論の提起を行うというように計画を変更した。そのため、初年度に遂行するはずであった各行為類型に普遍的な排除の識別基準の評価に関する検討については、これまでの研究の蓄積はあるものの、当初予定していたよりも遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、まずは、拙稿「排除型私的独占行為の認定における意図の役割 : 米国の単独行為規制からの示唆(1)及び(2)」青山ローフォーラム(2016-17)での研究を深化させ、取引拒絶行為規制における、経済的有意味性基準やRRCといった不当な排除の識別基準の役割及び有用性を整理する。そのうえで、取引拒絶行為規制における不当な排除の識別を巡る固有の課題について、特にRRCを中心に検討を行う予定である。 上記の検討を終えた後、平成29年度の研究成果である不当廉売に関する議論(2018年中に公表予定)を踏まえ、私的独占として規制されうる競争者排除型行為の規制一般に普遍化可能な排除の識別の議論を発展させていく。
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