2017 Fiscal Year Annual Research Report
テンソルくりこみ群によるCP(N-1)モデルの相構造の解析
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17J03948
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
河内 比花留 金沢大学, 自然科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 格子場の理論 / テンソルネットワーク / テンソルくりこみ群 / 相構造解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
QCDのトイモデルである2次元のCP(N-1)モデルの相構造の解析を行っている。このモデルはQCDと似た性質を持ち、ラグランジアンの中にCP対称性を破るθ項を含む。しかし、θ項を含む系に対して格子QCDの数値計算でよく用いられるモンテカルロ法を適用する場合、複素作用問題が生じ、その適用が困難となる。そこで本研究では、複素作用問題の新たな回避策として、テンソルくりこみ群という手法を用いた。テンソルくりこみ群は、近似の誤差を制御、推定しながら分配関数を計算する手法であり、モンテカルロ法のような確率的手法を用いないため複素作用問題が生じない。完成させたい相図は、CP(N-1)モデルに含まれる2つのパラメータβとθで張られる空間である。実際の解析はN=2の場合のCP(1)モデルについて行い、βが小さい領域から順に調べる。先行研究では既にモンテカルロ法を改良した方法でCP(1)モデルの解析がされており、θ=π上において、β≦0.5では1次相転移、0.5≦β≦1.6では2次相転移が起こるという結果が得られている。さらに、0.5≦βの領域では臨界指数が連続的に変化するという振る舞いが生じたが、数値誤差が影響している可能性が指摘されている。この領域を複素作用問題の生じないテンソルくりこみ群を用いて再解析し、先行研究の結果を検証することを目指す。テンソルくりこみ群の解析に必要となる分配関数のテンソルネットワーク表示については、我々が既に求めていたものを用いた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1年目は、β≦0.8の領域のCP(1)モデルの相構造をテンソルくりこみ群を用いて解析した。まずβが小さい強結合領域では、テンソルくりこみ群による結果が強結合展開による先行研究の結果と一致することを確認した。これにより複素作用問題が生じる系においてもテンソルくりこみ群による解析が有効であることが分かった。θ=π上での相転移の次数を調べるため、β=0.0-0.8においてθ=π近傍のトポロジカル感受率を計算した。これにより、β≦0.3において1次相転移、0.4≦βにおいて2次相転移という結果が得られた。この2次相転移の存在は、連続極限でCP(1)モデルと等価な理論であるO(3)モデルがθ=π上でギャップレスになるというHaldane現象を反映していると考えられる。さらに、βに対し臨界指数が変化する振る舞いが得られ、先行研究による解析と似た結果となった。しかし、この結果はテンソルの足の自由度の打ち切りから生じる誤差を含んでいるため、今後は足の次元を増やした際の収束を調べる必要がある。また、より高精度の解析を行うため、Loop-TNRという手法の実装を行った。Loop-TNRではエンタングルメントフィルタリングとループ最適化という手順を踏むことで、テンソルくりこみ群ではくりこむことのできなかった近距離相関を適切に処理することができる。これにより、Loop-TNRはテンソルくりこみ群が苦手としている臨界領域での計算精度を向上させることが分かっている。この手法をCP(1)モデルのθ=0の場合に適用して比熱の計算を行った。ループ最適化におけるテンソルのアップデートの回数を増やすことで、テンソルくりこみ群の解析では大きかった比熱の揺らぎを抑えることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、Loop-TNRをθ=π近傍の解析に適用することで、2次相転移近傍をより高精度で解析することを目指す。これにより、1次相転移から2次相転移に切り替わる点をより高精度に決定できる可能性がある。
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Research Products
(3 results)