2018 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17J04010
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山崎 翔太郎 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 中性子星フレア / マグネター / 高速電波バースト |
Outline of Annual Research Achievements |
博士課程2年目の今年度は, 博士課程1年目の後半からスタートした「中性子星(マグネター)フレアにおける定常電波放射の消失」という研究テーマに取り組んだ. 研究課題である高速電波バーストの起源天体候補の一つである「中性子星フレア」は, X線・ガンマ線帯域で頻発するバースト現象である. 発生機構として, 磁気エネルギーの解放による電子・陽電子プラズマの生成が関係していると考えられているが, 依然謎が多い. 本研究では, フレア発生時に生成したプラズマの膨張により, 中性子星の電波パルス放射が一定時間消失する可能性に注目し, 新しく考案した理論モデルが最近の観測(Archibald et al. 2017)を矛盾なく説明できることを示した. この理論モデルは, 電波パルスが消失するタイムスケールとフレアのエネルギーを関連付ける事ができる. 電波パルス観測のみから, その背後に潜む中性子星フレアの特徴を予測・制限できる可能性を提示したところに独創性があると言える. 本研究の成果を投稿論文にまとめ出版した. 現在は, 上記の研究では深く踏み込まなかった中性子星フレアの放射機構そのものに興味を持ち, 研究に取り掛かっている. 具体的には, 定量的な理論モデルが提案されていない, エネルギーの小さなフレア(ショートバースト)の放射機構に関する理論モデル構築を目指す. この目的のため, 今年度はイスラエルへの研究滞在を予定しており, 現地で受け入れ研究者との議論を通して, 現象の理解を深めるつもりである. また, 研究課題であるFRB に関する理論研究も継続して行う.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度に当初計画していた高速電波バーストの連星中性子星合体モデルの検証については, 昨年度にすでに研究が完了し, 投稿論文を出版している. そこで今年度は多少計画を変更し, 高速電波バーストの起源天体候補の一つである中性子星フレアに関する理論研究を行い, 論文を出版した. したがって, 当初の計画以上の進捗があったと言える.
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Strategy for Future Research Activity |
FRBの発見から10年が経過し, 高感度のASKAPや超広視野のCHIMEなど, FRBサーベイに特化した次世代型の電波望遠鏡が運用を開始したことにより, 今後はより多くのFRB検出が可能となる. これに伴い, FRB までの正確な距離測定に不可欠な母銀河の特定も大幅に進むと期待される. そのため, FRBとその母銀河の観測から得られる物理量を正しく評価し, FRBの発生環境や起源天体に対する制限を強める事が, FRBを通して天文学を行う上での急務である. そこで, 今年度は特にFRBの最も重要な観測量である分散度(以降単にDMと表記)に焦点を当てる. DMはFRBの発生源から観測者の位置まで視線方向に電子密度を積分した量として定義される. 観測されるDMはFRB が通過してきた3種類の環境, すなわち 1. 母銀河 2. 銀河間空間 3.我々の銀河(天の河銀河), における電子の寄与の総和(1+2+3)として表せる. FRBの母銀河が特定された場合, 母銀河の分光観測により, 正確な赤方偏移(距離)が決定される. 2は赤方偏移の関数として計算できるため(Ioka 2003; Inoue 2004), FRB直接観測(1+2+3)と母銀河観測(2)を組み合わせることで, 1+3におけるDMを得ることができる. FRB の発生環境を制限する上で最も重要なのは1だが, これを推定するためには3を見積もる必要がある. 3の推定には, 天の河銀河のディスク構造に沿って分布する低温ガスを考慮したモデル(Cordes & Lazio 2002; Yao et al. 2016)が広く用いられてきた. しかし実際には低温ガスの寄与に加えて, 銀河の外縁まで分布する高温ガスからのDMの寄与も正しく考慮する必要がある(Prochaska & Cheng 2019). そこで今年度は, 最新の銀河系内高温ガスのX線観測による結果(Nakashima et al. 2018)を用いて, 現実的な高温ガス分布モデルを考案し, これに基づき新しい銀河系内高温ガスによるDMのモデル構築を目指す.
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Research Products
(6 results)